金価格が史上最高値を更新する中で、「ゴールドラッシュ」の気配は見られず
2023年11月7日ロンドン - 個人投資家は、金価格が史上最高値を更新する中で、金購入よりも売却を選択していたことが、世界有数のオンライン貴金属現物投資サービスを提供するブリオンボールトの最新のデータで明らかとなった。
ブリオンボールトのリサーチディレクターであるエィドリアン・アッシュは、「中東における紛争のニュースを受けて、金価格が2000ドル台を4度試していることから、金が地政学リスクで上昇することを否定することは難しい。しかし、金地金の現物市場では利益確定の売りが続いており、先物やオプション市場での投機的な取引が、短期的な価格の方向性を決める傾向が強くなっている。」と述べている。
ブリオンボールトは、2005年4月に、個人投資家が金地金を24時間週末も休むことなく、リアルタイム価格で取引できるサービスを開始して以来、現在では世界10万人以上のユーザーの、40億ドル(6140億円相当)以上の金、銀、プラチナ、パラジウムを保管している。
先月10月に、金地金の購入を選択した顧客数は、9月の4年ぶりの低水準から16.4%増加した一方で、売却した顧客数は69.3%急増し、米国の地方銀行の破綻による危機が金価格を史上最高値へと急騰させて売却者数を急増させた3月以来の高水準となっていた。
これは、個人投資家の実際の貴金属現物取引データを基に算出するブリオンボールト独自の指標である金投資家インデックスを1.4ポイント下げて51.8とし、1月の3年半ぶりの低水準である50.6以来の低水準となった。
50.0という数値は、その月に金の保有を開始または追加した顧客数と、保有量を縮小または保有地金を全て売却した顧客数が完全に一致したことを意味する。金投資家インデックスは、2020年3月にコロナ危機が始まった際に65.9の10年来のピークを記録し、2019年6月の49.1が最低で、それ以来50を下回っていない。
エイドリアン・アッシュは下記のようにこの状況を解説している。
「他の資産クラスが下落する中で、再び地政学リスクの高まりが金価格を高騰させ、金融システムの保険としての金の位置づけが立証されたようだ。しかし、個人投資家は金購入を行うよりは、この直近の記録的な高値を利用して利益を確定し、ポジション全体のバランスを調整している。」
金は米ドル建て価格で6.8%高のトロイオンスあたり1997ドル、英ポンド建てで7.4%高の1645ポンド、ユーロ建てで6.5%高の1883ユーロ、日本円建てで8.3%高のgあたり9727円、そして中国元を含む他の多くの主要通貨建てで、月末価格で過去最高値を更新して10月を終えていた。
これとは対照的に、世界の株式市場は3.0%下落し、MSCIワールド指数は3ヶ月連続の下落となり、主要な欧米の国債価格も下落し、米長期債価格は月間で5.8%下落していた。
ブリオンボールトでは顧客全体として、先月1日平均で購入量よりも67.2%多い金地金が売却されていたことから、10月の金地金の購入量を差し引いた売却量は合計470キログラムとなり、2019年6月(775キログラム)以来の1ヶ月間で最も多いネットの売却量となっていた。
その結果、ロンドン、ニューヨーク、シンガポール、トロント、チューリッヒの中から顧客が選択した、専門保管場所で安全に保険がかけられて保管されている金地金の総量は1.0%減少し、2022年5月以来最も少ない47.4トンとなり、8月末の史上最高値を1.5%下回ることとなった。
しかし、これらの金地金の保有額は、ドル建てで5.7%増の30億ドル(ポンド建てで6.4%増の25億ポンド、ユーロ建てで5.5%増の28億ユーロ、日本円建てで7.2%増の4610億円)と過去最高を更新し、金の12ヶ月平均価格は、史上初トロイオンスあたり1900ドルを超え、4年連続で年間平均記録を更新する勢いとなっている。
エィドリアン・アッシュは、次のようにコメントしている。
「金価格に連動する上場投資信託は、前月まで5ヶ月連続で縮小しており、欧州と北米の小売り店では、顧客がこの史上最高値で売却しているため、中古品で溢れている。
世界最大の金消費国の中国の金需要は、本来金需要が高まるディワリ祭を控えた世界第2金消費国のインドとは対照的に、堅調に推移している。しかし、中央銀行が記録的な金準備のための購入で金価格を支え続けている一方で、10月のトロイオンスあたり2000ドルを超える価格上昇の真の原動力は、金派生商品市場の大きな基調の転換であった。
ヘッジファンドやその他の投機筋は、10月7日のハマスによるイスラエルへの攻撃後にショートポジションを積み上げていたものの、その後一斉にこのポジションの手仕舞いとロングポジションを増加させて、先物やオプション取引のネットのロングポジションをほぼ記録的なペースで増加させ、現物投資家の利食いを誘ったのだった。」
0.5%のみ上昇しトロイオンスあたり23.30ドルにとどまったためである。
投資家の銀購入量から売却量を差し引くと、ブリオンボールトの顧客は全体で3.0トンを保有量に追加していた。これは、過去1年間で5ヶ月目の追加となり、顧客がロンドン、シンガポール、トロント、チューリッヒから選択した保管場所で貯蔵されている銀総量は1,243.7トンとなり、9月の15ヶ月ぶりの低水準から0.2%増加していた。
10月のハマスによるイスラエルへのテロ攻撃とそれに続くイスラエルのガザ侵攻は、ブリオンボールトにおける新規顧客数を前月比26.8%増加させていた。これは、ユーロ圏からの新規顧客数が44.6%増加していたことにけん引され、米国の14.3%増と英国の9.6%増と続いていた。
しかし10月の新規顧客数は、過去12か月の平均と比較すると、ユーロ圏では未だ16.7%減、英国では39.2%減、米国では61.8%減となっている。
「金利の上昇と記録的な金価格の高騰が、貴金属への新規投資家の足かせとなっている。多くのメディアの見出しがゴールドラッシュと伝えていることとは裏腹に、中東からの悲惨なニュースは、未だ地金現物投資市場の足かせを取り除いていないようだ。」
以上
連絡先: ホワイトハウス佐藤敦子
直通電話番号: +44(0)20 8846 3804
メールアドレス:atsuko.whitehouse@bullionvault.com
ブリオンボールトの金・銀投資家インデックスについて
ブリオンボールトの金・銀投資家インデックスは、個人投資家の地金現物の投資傾向を表す、世界でも数少ない指標である。24時間取引が行われている、ブリオンボールトのオンライン市場で取引がされたデータを基に算出され、それぞれのインデックスは、月間でその地金の購入が売却を上回ったネットで購入した投資家の数と売却が購入を上回ったネットで売却をした投資家の数のバランスを表している。そして、この購入者数と売却者数が完璧に一致した際を50として表示されている。
ブリオンボールトが発表するデータは、他の金銀地金市場のデータを補完し、世界最大の個人投資家へ行ったアンケート等の「意図」ではなく、実際に取引されたデータを基に算出されている。詳しくは、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)のAlchemist誌の2013年の記事をご覧ください。
ブリオンボールト社について
ブリオンボールトは、金・銀・プラチナ・パラジウム地金現物所有サービスをオンラインで提供している世界でも有数の英国企業。2005年にサービスを開始し、現段階で10万人を超える個人投資家が40億ドル(6140億円)相当の地金を保管し、専門市場の取引料率の低さと、流動性の高さ、そして厳重なセキュリティーという恩恵を受けている。また、ブリオンボールトのサービスは自己投資型個人年金の英国のSIPPや米国のIRA口座、信託口座、企業やチャリティー団体が現物金地金を保有するためにも使われている。
ブリオンボールトは、下記サービスを提供している。
• オンラインとモーバイルで金・銀地金現物を24時間取引し、即座に決済。
• 米国ドル・ユーロ・英国ポンド・日本円の利用が可能。
• 地金現物を格安費用で、ロンドン、チューリッヒ、ニューヨーク、シンガポール、トロントで特定保管。
• 日々オンライン上で、顧客所有の金・銀現物が保管されていることを証明するディリーレポートを公表。
ブリオンボールトは、2008年にロンドン貴金属市場協会(LBMA)の正会員となった。そして2009年には、個人投資家が地金専門市場にアクセスすることを可能としたことから、英国女王賞を革新部門で受賞し、2013年4月には、過去4年間の国際取引が140%増加していることが認められ、英国女王賞の国際取引 部門で2度目の受賞をしている。また、2011年には英主要紙のサンデー・タイムズの成長のスピードと規模を測る「Fast Track 100 (急激に成長している非上場企業100社)と Top Track 250(中規模非公開企業トップ250社)」の両方のカテゴリーにランクされた4つの企業の1社となった。2017年3月には、プラチナ業界のマーケティング団体のワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシルによってオンライン・プラチナ地金投資保管のパートナーとして選ばれる。ブリオンボールトは、2022年5月から10月にかけて大英図書館で開催されている「Gold」展のスポンサーとなっている。
さらに詳細は、http://gold.bullionvault.jp