ゴールドコラム & 特集

中国のプラチナ輸入とプラチナ相場


 プラチナ価格は7月から急速にその上げ足を速めています。その値動きの鍵を握るのが中国です。中国は世界のプラチナの宝飾品需要の約70%を占めます。プラチナの宝飾品需要は全需要の30%になります。中国のプラチナ輸入数量の動きが、この価格の上昇によってどう変化するのかは直接プラチナの今後の動きに関係してきます。中国のプラチナ輸入の現状とそれを通したStandard Bankのプラチナ相場のviewを紹介します。

 7月の輸出入統計では中国のプラチナ輸入は前年同月から6.6%減少し約9トン。年初からの数字は、ほぼ変らずので3%だけ増加して49.5トン。中国のプラチナ輸入の変化を見ていると、2012年以来、価格の動きに対してより反応するようになってきているようです。価格弾力性が大きいいうことですね。もしプラチナ輸入がそれだけ価格弾力性が大きいとすれば、2012年の前半7ヶ月の価格の平均が1537ドルであり、2013年の同期間も1528ドルが平均価格でほとんど変化がなかったことで、2013年の7月までの年間輸入量が2012年の同時期とほとんど変らないことは驚くべきことではないでしょう。

 月間プラチナ輸入量とプラチナ価格を比べるとその関係がはっきりします。下のチャートFigure1は中国のプラチナ輸入量とプラチナ価格ですが、見事に逆相関を示しています。特に2013年前半の価格の下落と輸入量の急増は目を見張るものがあります。



 2012年年初からの3ヶ月のプラチナ輸入量の移動平均とプラチナ価格の相関は-0.77になっており、プラチナ価格が上がれば、輸入量が減ります。(Figure 2)



 2012年以前はこのようなコンスタントな逆相関は認められませんでした。2009年から2011年の間は相関は0.66でした。(Figure3)



 2012年以来、輸入がより価格に呼応するようになった理由をStandard Bankのアナリストは「中国の宝飾、自動車触媒、その他産業用のプラチナの在庫がある程度できたこと、そしてそれまでのように価格に関係なくではなく、出来るだけ安く買うという姿勢が出てきたこと」をその理由にあげています。Standard Bankでは2008年から中国は約71.5トンのプラチナ在庫を積み上げているとみています。これがプラチナの中長期的相場に与える影響を考えると、南ア供給不安からプラチナ相場は上昇する可能性があるが、自動車触媒の需要が弱く、価格上昇によって宝飾需要の減退が予想される価格上昇維持は困難であると予想しています。1500ドルを大きく超えるところは逆にショートのチャンスと、Standard Bankアナリストはみています。

以上。

★池水氏の著書『THE GOLD ゴールドのすべて』好評発売中!!
http://www.hsquare.jp/the_gold.html
★池水氏によるブルースレポート
http://www.ovalnext.co.jp/bruce/

岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

最新コラム

新着ゴールドグッズ

一覧を見る