ゴールドコラム & 特集

世界一になった南アのPt ETF - NewPlat

「Gold ETFが相場にあたえた影響」

 Gold ETFが昨年2012年11月に2647トンという残高の最高記録をつけてから、2013年の最低水準は1968トン(8月)で、679トンものゴールドの売りが出たことになります。2003年から約10年かかって積み上げられたものが、半年ちょいで約25%も減少したことになります。ゴールドの価格は1800ドルから一時1200ドル割れまで急落こちらはほぼ30%下がりました。まさにETFの売りがゴールドの価格の下落の大きな要因になったといえます。ところが一方PGM、特にプラチナETFはゴールドと全く違った動きをしています。

(Gold ETF Total)



「増え続けるプラチナETF」

(Pt ETF過去1年の伸び)



 ゴールドは大きく残高を減らしましたが。プラチナは全く事情が違います。まず一つ目のチャートは過去1年間のプラチナETFの残高推移です。5月からその残高が急増しているのがよくわかりますね。4月26日に南アで新しいPt ETF(ランド建て)であるNewPlatという商品が上場され(運用はAbsa Capitalという会社です)、この商品が急速にその残高を伸ばしてきているためです。これは正直に言ってプロの間でも大きなショックを与えています。これまで南アで上場されたETFがこれだけの影響力を持つようになると考えた人はほとんどいなかったでしょう。人々の予想に反して、上場来から急速にその残高を伸ばしており、上場来たった4ヶ月で8月末にはとうとう世界一のPt ETFになってしまいました。9月第一週現在でPt ETFのトータル残高は2,261,462tozで約70.3トン。そのうちこのNewPlatは615,101tozで約19.1トンとなり、これまで世界一であったETF Securities USを追い越してしました。こちらは589,863tozで約18.3トンです。

 どうして南アでこれだけのPt ETFが買われているのでしょうか。その背景として考えられるのは、まずこの商品ができたことによって、これまでプラチナのexposureを取るためにプラチナ鉱山株に投資していた投資家が、こちらに一挙に資金を移したことが考えられます。プラチナ鉱山株は、たとえプラチナが上がると考えていても、コストの急激な上昇と慢性的とも言える労使問題、そして欧州の不況からのプラチナ需要の弱さから、株価の上昇は望み薄であるところに、プラチナそのものに投資できる方法としてこのPt ETFが受け入れられたと考えられます。実際Anglo American Platinum、Lonmin、そしてAquariusといった大手プラチナ鉱山会社は年初から2桁パーセントで株価が下落しています。プラチナに投資したくてもプラチナ鉱山会社には投資したくないという投資家の気持ちは十分に理解できますね。

 またもう一つの理由として南ア独自の理由があります。南アランド建てであることから、南アの投資家の外貨建て35%ルールに抵触しないということです。南アの投資家には外貨建て投資の制限があり、35%以上の外貨建ての投資ができないことになっています。世界のプラチナ市場(NymexやLoco Zurich)はドル建てであり、ランド建てで直接プラチナに投資できるという面がこの爆発的な伸びの背景にあるようです。ドル建てのプラチナは年初からはほぼ変らずか若干下がっていますが、ランド建てでは6.6%ほど上昇しています。南アの投資家は自国でのプラチナ鉱山の情況を目の当たりにしているだけにやはり彼らがこれだけプラチナをロングしているというのは、我々にとっても考慮すべき材料ではないでしょうか。

(Pt ETF上場来の動き)



(世界のPt ETFの残高)



以上。

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岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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