ドルとコモディティ・日本の債務の現状
今週は二本立てで。「ドルとコモディティ」「日本の債務の現状」です。
「ドルとコモディティ」
コモディティ全般が相変わらず頭が重たい展開が続いていますが、その最大の要因となっているのが、「ドルが堅調」であることです。10月の第二週だけでドルは約2%も強くなりました。ドルとコモディティの関係を検証してみましょう。
(ドルインデックスとゴールド価格)
米国の金融および財政の問題はまだ不確定な要素が大きく、11/8今週金曜日が雇用統計の発表であること、FEDによる資産買取プログラムの縮小のタイミングとまだワシントンで交渉されている財政問題に関する不安から、ドル相場は大きく動きやすい情況にあります。多くのCommodityが現在供給過多であることを考えると、ドルの価値がCommodity相場においてこれまで以上に重要な役割を果たすと思われます。
いろいろなコモディティ価格のドルの動きに対する感応度を、今年に入ってからのものを調べてみると下記のグラフのようになります。これはドルの動きに対するいろいろなコモディティのベータ値とも呼ばれるものです。ドル高の場合とドル安の場合で計算されています。相関関係は因果関係を示すものではありませんが、ドルの動きに対してコモディティが敏感であることはよくわかります。
上の表でわかることはまずドルが強くなるとすべてのコモディティが下がっているといううこと。そして、供給に不安があるコモディティはその下げ幅が小さいということです。具体的にはドルが強含んだとき、原油、プラチナ、パラジウムそして銅がその下げ幅が小さく、対照的にシルバー。ゴールド、そしてアルミは下げ幅が大きく、ドル高にもっとも敏感に反応しており、今後もドル高はこれらのメタルの大きな下げ要因になると思われます。比較的優位とドルという観点から考えると現在のコモディティの投資対象として有望なのは銅、原油、プラチナそしてパラジウムということになりますね。
「日本の債務の現状」
財務省によると日本の債務残高(国債、借入金、国庫短期証券をあわせたもの)は今年6月に1000兆円を突破し、国際通貨基金IMFによると日本の公的債務残高の対GDP費は今年の年末には244%に達すると予想されています。ちなみに債務上限の引き上げをするために何度も大きな論争となっており、そのたびに債務不履行の一歩手前まで行っている米国の債務のGDP比は106%です。この情況に対してIMFが8月に公表した報告書では消費税を少なくとも15%にまで上げるべきだとしています。
(日本の債務GDP比の推移)
このような危機的状況にもかかわらず、10年もの国債利回りは足元では0.6%前後と世界でももっとも低い長期金利となっています。この低金利が財政危機に対する議論を吹き飛ばしています。そして現在この国債市場の大きな部分を日銀が吸収しており、市場のリスクを正しく反映できていないとの声をきくようにもなりました。日銀の最優先政策はまず実質金利を下げて経済成長を推し進め、デフレを脱却するというものであると思われますが、それの代償として債券市場の機能不全を伴っていると考えることができます。
まだ少なくとも市場が安定している間に、抜本的な財政の健全化のための財源の確保を計画する必要があるでしょう。とりあえず手をつけやすい税収を増加させること、つまりIMFの言うように消費税の上げは絶対必要です。それも将来的には欧州並みの20%くらいまで劇的に上げる必要があるでしょう。1000兆円の借金を返すためには、20%でもまだ全然足りません。同時に歳出も減らす必要がありますが、高齢化のすすむこの国では社会保障関連費はおそらく増える一方でしょう。日銀が目標とするインフレ率2%が達成できたときには、当然のことながら、借金に対する支払金利も増えることになります。それが経済好転の結果であればよいのですが。最後に無理やり付け加えると(笑)、こういう状況下においてこそ、ゴールドをはじめとする実物資産をいざというときの保険として、ポートフォリオの一部に組み入れる意味が大きいと思うのです。
以上。
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