今年の相場の振り返り(PGM)
今週はPGMを振り返ってみましょう。
「プラチナ」
Open 1541(01/01) High 1742 (02/07) Low 1295 (06/28) Last 1362 (12/16)
株価の上昇、景気回復への動き、供給の不足、そして南アでの労使問題と産業用メタルとしてのプラチナには上昇する要因は十分にある一年でしたが、盛り上がりは2月の1700ドル台だけで終わり、あとはゴールドの下落に同調して下げ基調のまま一年が終わりに近づいています。やはりゴールドの下げの与える印象が強すぎるのでしょうか。プラチナ単体で考えたときには、これほど下げるマーケットではなかったと思います。特に1400ドル割れという水準は、生産コストを意識させるレベルであり、ここは売られすぎだと考えます。特にプラチナ触媒が使われるディーゼル車のメインマーケットである欧州の回復基調が目立ってきた現在、需要も景気回復とともに伸びてくるはずです。株高のマーケットはゴールドにとっては頭が重たいものとなりますが、PGMにとってはプラスの材料。やはり1400ドル割れというレベルは拾っておいてよいレベルだと考えます。
(PT ETF & Nymex investors position)
今年注目すべき出来事として南アで上場されたPt ETFがあります。今年の5月に上場されたNewPlatというPt ETFはあっという間にその残高を増やし、現在では893,730toz(=27.8トン)と、世界最大のPt ETFになっています(2位はETF Securities で558,872toz=17.4トン)。PT ETF全体の残高は2,519,429toz=78.4トンであり、これは過去最高残高です。大きくその残高を減らしたゴールドとは対照的に、PT ETFは残高を増やし続けているのです。南アで上場されたETFが急激にその残高を伸ばした背景にあるのは、南アの投資家がおかれた特殊事情があります。南アでは外貨への投資には厳しい制限があり、これまでは南アの投資家がプラチナに投資する方法がありませんでした。ほかのETFやNymexはすべてドル建て。AngloやImpalaといったプラチナ鉱山会社の株に投資するという方法はありますが、会社自体のパフォーマンスがよくない今、純粋なプラチナ投資とはやはりだいぶ温度差があることになります。ですから南アの投資家は全世界でほぼ80%も生産しているプラチナに投資する方法がいままではなかったのです。ところがこのNewPlatの登場により(当然のことながら南アランド建てです。発行者はAbsa証券)、南アの投資家にとってのプラチナ投資の道が開けたのでした。そしてまさにそれを待っていたかのように、投資家が一斉にこの商品に資金を向けたのです。この実質的な買いもさることながら、南アの情勢が一番よくわかっている南アの投資家がこれだけプラチナを買うということのほうがより僕にとってはインパクトが強いですね。
(世界のPT ETFとその残高)
「パラジウム」
Open 704.00 (01/01) High 783.00 (03/08) Low 632.00 (06/26) Last 715.00 (12/16)
(Pd ETFとNymex Position)
パラジウムは貴金属4品の中で唯一、今年大きく下げなかったメタルです。ゴールドが年初から26%、シルバーは34%、プラチナでさえ11%もの下落となりましたが、パラジウムだけはほぼ年初と変わらず、もしくは若干あげている状況です。その要因として考えられるのは最大の生産者であるロシアからの在庫売却の勢いが衰えたこと。そして需要面からは、パラジウムが使われるガソリン車の中国での売り上げが伸びていることがあげられます。このため、パラジウムは2012年に続き2013年も供給不足の状態が続いており、2014年もこの状態は続くと予想され、来年も貴金属の中ではダントツに投資環境はよいと考えられます。いかんせん流動性が少ない、そして投資家にとってもあまり投資のツールがないという難点がありますが、それが逆に幸いしてほかの貴金属のように投資マネーの流れに翻弄されず、ファンダメンタルが素直に相場に反映されているとも考えられます。専門家の中にはパラジウムがプラチナの価格に近づくという考え方の人間もいるほどです。またプラチナの項で紹介した南アのAbsa証券が同じくパラジウムのETFを来年に上場する予定があり、これがプラチナの何分の一でも成功すれば、パラジウムのマーケットにとっては大きなインパクトがあると思われます。現在の貴金属の中では唯一あまり大きな下値不安がないのがパラジウムなのです。
既存のETFの残高、Nymexのロングポジションも高レベルを維持。逆にNymexのロングが大きいことに若干の不安はありますが、650ドルが目安といわれる生産コストもあり、下値は限られているいうのは今年のパラジウムの値動きをみる一目瞭然でしょう。700ドル割れの場面は拾いどころだと思います。
以上。
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