スタンダードバンク相場予想 PGM
「PGM」
■プラチナ、パラジウム、ロジウムの上値は限られる
我々のPGMの見方はほとんど変わらない。短期的にはプラチナ、パラジウムとロジウムの上値は限られる。2014年はあまり大きな動きのない相場になりそうである。しかしながら長期的には2015年には3つのメタルとも上昇することを予想する。プラチナは2014年第一四半期は平均1425ドル。パラジウムは750ドル、ロジウムは1100ドル。2014年年間平均は前回の予想を下方修正し、プラチナは1650ドルから1463ドルへ。しかしパラジウムは南アでのETFの上場がほぼ決定したため予想を引き上げて、727ドルから775ドルへ。
■需給のバランスシートは変化なし
前四半期から需給バランスはほとんど変わらず。プラチナは南アの鉱山生産を低めに修正。需要予想は変わらず。ただしここ数ヶ月増えている南アのETFの残高を計算に入れた。そして供給の数字に修正によって、3メタルとも供給不足が大きくなっている。プラチナは2013年は451k toz(約14トン)の供給不足を下方修正で578k toz(約18トン)の供給不足予想。2014年は前回の予想の559k toz(約17.4トン)を620k toz(約19.2トン)の居休不足へ変更。パラジウムは1256k toz(約39トン)の供給不足予想で、これは前回と変わらず。2014年は1803k toz (約56トン)から2004k toz(62.3トン)の供給不足に変更。
■マーケットはそれでも十分な供給が存在
2014年およびそれ以降の供給不足の予測にもかかわらず、特に2014年の相場予想は、価格の上昇を予想していない。その理由は地上在庫が十分にあるということ。南アで新たに上場されたプラチナETFの影響で2013年だけでも約31トンもの残高が増加しているのに、価格がほとんど上がっていないという事実、そしてプラチナもパラジウムもリースレートがほぼ0%であるということが、ふんだんな地上在庫の存在を示しているといえよう。
この地上在庫は相当存在し、それが価格の頭をおさえると考える。逆にいうとプラチナ・パラジウムの価格の動きから相当量の地上在庫の存在が読み取れるのである。
我々の地上在庫の分析によれば、この地上在庫の量は確かに非常に大きなものであり、そのために生産コストを割り込むような価格のマーケットになっていると言える。我々の2013年の供給不足の数字を考慮すると2014年年初現在の地上在庫の推定はプラチナは1046日分、パラジウムは879日分にもなる。ただ特にプラチナはほとんど動かない在庫が多いこともあり、ある程度の地上在庫が掃ければ、価格には上昇圧力がかかるだろう。全体的には、マーケットが上昇するには大方の期待以上の時間がかかると思われる。
■プラチナ ? 自動車触媒需要は若干の増加
プラチナの需要の見込みは比較的しっかり。2014年は投資需要を除いて、プラチナ需要は前年と比べて3%の成長。2013年もいまだぱっとしなかったヨーロッパの自動車触媒需要も2014年にはある程度の回復を予想。また宝飾需要は好調を維持し、2014年は5%の成長を予想。
■パラジウム ? 自動車触媒需要は大きく成長を予想
パラジウムに関する限り、その鍵を握るのはガソリンの触媒需要である。我々の世界の自動車販売数予想ではガソリンエンジンへの偏りが、欧州の自動車販売の弱さからの影響を受けずに新興国での自動車(ガソリン車)需要や比較的しっかりした中国での需要、米国の自動車販売の回復などの恩恵を多いに受けることになろう。2014年の世界での自動車生産は8290万台となり、中国が前年比15%の伸びで1890万台、米国が5%伸びて1060万台となる予想。重要なのはガソリン車が2013年のシェアは78%を維持し、パラジウムの触媒需要は530mio toz(約165トン)へと増加し、前年比8%との伸びを予想。その他の需要を含んだ総需要は770mio toz(約239トン)となり2年連続史上最大の需要を更新するだろう。
■中国のプラチナ需要は価格の影響が大きく、パラジウムにはアノマリー
中国はプラチナ宝飾のマーケットにおいては支配的な地位にあり、世界のプラチナ宝飾需要の70%を占める。宝飾需要は総需要の中の30%。2012年から中国のプラチナ輸入はそれ以前にも増して、価格に敏感に反応するようになりました。プラチナの輸入量と価格の関係は下のFigure 7にはっきりと現れています。
パラジウムに関しては2013年11月まではわずか645k toz(約20トン)の輸入であった。2012の同期は615k toz(約19トン)、2011年は874k toz(約27.1トン)。中国のパラジウムの輸入は、中国の自動車生産が増加しているのにもかかわらず減少しています。中国の自動車生産は2011年は1-11月で1670万台だったものが、2012年の同期には1750万台に増加、2013年は1998万台へと増加しています。
このアノマリーの理由として考えられるのは
1.税関のパラジウム輸入の数字が過少申告になっている。
2.中国が明らかにパラジウムの在庫を抱えている。
3.自動車生産が現在の見込みよりも少ない。
4.パラジウムのリサイクルによる供給がマーケットの認識よりも多い。
1と4の理由がもっともありえるものと我々は考えている。750ドルを超えるところでは、抵抗線があると考える。このレベルを超えるところではロシアの輸出が活発になるからだ。同時に自動車触媒需要もしっかりしているので、パラジウムのサポートは670ドル当たりになるだろう。
以上
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