Standard Bank Commodities Quarterly April 2014
今週はStandard Bankの四半期レポートの要約(ゴールドとシルバー。PGMは来週)を送ります。前回は1月でしたから今回は第二四半期です。基本的に1月の時の予想と大きくは変わっていません。
(スタンダードバンク相場予想)
「ゴールド」
・価格回復はゆっくりと目立たず
ゴールドは2014年は2013年の平均価格より安くなるという見方は変わらず。またゴールドの底値は2014年後半になると考える。その後の価格回復はゆっくりと目立たない動きとなろう。ゴールドの需要は、ファンドなどの投資家需要よりも、実需の現物需要に左右されると思われるからです。実需の現物需要、特にアジアの需要は価格に敏感であり、ゴールドが1200ドルの時は強かったが、価格が大きく急に上がることがあれば需要はなくなり、これがゴールドの大きな戻しを妨げる要因になると思われる。
我々はアジアでの現物需要を過去5年にわたって毎日追いかけているが、2月末辺りから現物の需要がすっかり落ち込んでいる。需要が完全に無くなったわけではないが、その勢いは大きくブレーキがかかっています。2014年のここまでの様子をみていると、2013年よりも2012年にその動きが似ています。下のFigure1では2012年と2014年の需要線がほとんど重なっているのがわかります。2013年はゴールド価格が1700ドルから1300ドル以下まで下がる過程で、東アジアのゴールドの加工需要は前年比30%も増加しました。しかしながら2014年の値動きは1300ドル以下でも同じような需要は出てきていません。
この実需現物需要の弱さはSGE(上海黄金交易所)のプレミアムに現れています。ゴールド価格が3月半ばの1400ドル手前から月末の1300ドルまで下がっても、SGEはディスカウントでした。そんな中、一つのポジティブな考え方はゴールドがこれ以上大きく下げるとするならば、アジアの実需需要は改善し、ちょうど昨年がそうだったように、下値を支える役割を果たすという見方です。
投資需要サイドでは、もっとも大きな心配は、米国の実質金利とゴールド価格の関係が強いということです。(Figure3)米国の実質金利は10年物のインフレリンク債の利回りがその参考になりますが、2012年年末の-0.9%という低値から、昨年2013年9月の高値0.91%まで大きく上昇しました。それから後は実質金利はまた低下し、0.5%まで下げました。これが原因で昨年一年続いたGold ETFの売りが止まったと我々は考えます。
投資需要サイドでは、もっとも大きな心配は、米国の実質金利とゴールド価格の関係が強いということです。(Figure3)米国の実質金利は10年物のインフレリンク債の利回りがその参考になりますが、2012年年末の-0.9%という低値から、昨年2013年9月の高値0.91%まで大きく上昇しました。それから後は実質金利はまた低下し、0.5%まで下げました。これが原因で昨年一年続いたGold ETFの売りが止まったと我々は考えます。
「シルバー」
・2014年のシルバーは20ドル以下
ゴールドの見方と同じく、シルバーも2014年は20ドル以下での取引が続き、年後半に若干強含むことを予想します。
我々のファンダメンタルの見方は変わっていません。シルバーの需給のファンダメンタルは弱く、在庫は豊富です。中国(2009年から大きく伸びた需要国です。)の地上在庫は17ヶ月分もの加工ができるくらいの量があると考えます。これは2009年の4か月分、2012年年初の16ヶ月分と比べてもまだ多い量です。
在庫の証拠は中国の輸入統計にあります。シルバーは貴金属の中で唯一、価格の下落にもかかわらず輸入が伸びませんでした。(Figure4)
その上、産業用需要が全需要の46%を占めているので、続く製造業の不振はシルバーにとってはネガティブ。(コインとメダルが10%、投資需要が13%)
中国国内の状況は次の二つのシナリオのうちのどちらかが実行されれば、継続的な上昇マーケットになる可能性があります。1. 内需(加工と投資需要)が在庫を減少させるだけのスピードで成長すること。2. 中国が再びシルバーの輸出国になること。
1.中国の製造業はもはや2月3月の停滞からだいぶ改善してきているが、まだ状況を目に見える形で改善させるのはいたっていない。
2.中国がまたシルバー輸出国になったとしても、それは在庫の場所が変わっただけで必ずしも消費されたわけではないので、これはマーケットの価格的には中立な要因。
そのため我々は第一のシナリオの中国のシルバー内需の拡大と世界的な製造業の飛躍が、シルバーの在庫を減少させ、シルバーの相場見通しを強気にする唯一の道のりだと考えます。中国のシルバー在庫の増加のスピードは遅くなってはきましたが、まだ依然として増え続けています。これが相場の頭を抑えそうです。今年一年はシルバーは頭の重たい展開を予想します。シルバーの値動きはゴールドの1.4倍という相関関係が認められます。とすればゴールドが下がれば、それ以上にシルバーは下がるということになります。
シルバーの相場リスクは増え続けているシルバーETFの残高にあります(Figure 5)。この残高はもし金利が上昇するとシルバーにとっては大きな下げ要因になりえると思います。
これらの結果から、シルバーはやはりショートから入りたいメタルです。ここまでの18.50-19.00の非常に強いサポートがあることを考えるとこのレベルでショートしてもリスク・リターンの観点からはあまりよい選択とは言えません。ただ上昇場面は続かず、もし18.50のサポートを破ればさらに下がる可能性があります。ただここを破るためにはゴールドがさらに大きく下落する必要があるでしょう。
以上
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