WGC Gold Trend Demand 2014から
WGC 「Gold Demand Trend 2014」が先日発表されました。今週はそこからゴールドの最新の需要状況を見てみましょう。
昨年2014年は2013年に較べてゴールドの需要は4%の減少となりました。中でも目立つのは現物への投資の減少です。これは2014年が振るわなかったというよりも、2013年の買いが異常であったというべきなのでしょう。地金やコインはもっとも落ち込みが激しい分野で6割から7割も減少しました。ただし、投資全体で考えるとETFの落ち込みが減ったため(2013年は880トンもの売りが出ましたが、2014年はそれが159トンになりました。)、2013年の885トンに対して905トンと2%増となっています。宝飾需要は10%の減少ですが、それでも過去5年の平均よりも5% 多く、決して悪い年ではなかったようです。
(宝飾需要:宝飾需要は2009年の低需要状態からリカバーしつつある。)
昨年の需要の中で目立ったのは「中央銀行の買い」です。2013年の409.3トンに対して2014年は477.2トンと14%の増加となりました。この数字は過去50年で二番目に多い数字となります。最も買った国はロシアで、173トン購入しました。その他の国としてはカザフスタン、イラクが目立ちますが、ずっとコンスタントに買い続けているロシアの数量がやはり突出しています。2015年に入ってからのルーブル危機や原油安という情勢へのいわゆるヘッジとしてのロシアのゴールド買いはもっと増えているのではないかと思われます。
(主な中央銀行のゴールド買い)
またここ数年のゴールド需要においてもっとも目立つ存在である中国とインドは、2013年の異常な数字を除くと2014年もしっかりとした年であったといえます。中国とインドをあわせたゴールドの需要量は、過去10年で71%も伸びました。2014年の両国のゴールド需要は、2005年から33%増加し、世界のゴールド需要の54%にも達することになりました。この両国の成長が原動力となり、新たなゴールドマーケットの構造ができつつあります。SGE(Shanghai Gold Exchange)のInternational Boardの設置、SGX(Singapore Exchange)のゴールドキロバーコントラクト、CME(Chicago Mercantile Exchange)の香港でのゴールドキロバーコントラクト、そしてタイの証券取引所の現物ゴールド取引所設立の予定と、アジアの現物需要に沿った形でのゴールドマーケットのインフラの変化が起きつつあります。今年2015年はこれら新しいインフラが新たなマーケットとして定着していくのか、それともこれまで幾度となく繰り返された失敗として消え去っていくのかも興味深いところです。
最後にゴールド需要の基本知識をまとめてみましょう。必ずしもいつもそうだとは言い切れませんが、大雑把にまとめるとゴールドの需要には以下のような特徴があります。
・ゴールドの需要は年間約4000トン。
・そのうちの約半分(2014年は55%)を宝飾需要が占める。
・投資需要が23%、中央銀行の買いが12%を占めており、宝飾需要とあわせてゴールドの90%が、そのままの形で保有される需要である。
・実際に材料として使われる産業用需要は1割に過ぎない。
・これはシルバー、プラチナ、パラジウムといったいわゆる工業用メタルとは対照的な割合。ゴールドは実用的価値よりもその象徴的な価値が重要視されているといえる。
・そのため、投資や宝飾需要がその価格を左右する最大の要因であり、その他のメタルのような工業用需要は比較的に価格形成影響力は小さい。
・不景気でゴールドに対する投資需要が盛り上がるときには相場が上がりやすく、逆に景気がよく、株価が上昇し、物が売れるときには工業用用途の大きいシルバーやPGMが上がりやすい。
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