ゴールドコラム & 特集

GFMS Gold Survey 2015 ? Supply in 2014

前回に続きGFMS Gold Survey 2015です。今回は「2014年のゴールド供給」です。

「要旨」

・鉱山生産は6年連続で増加。2%増えて3133トンは史上最高。

・オールインコストは25%下がって1314ドル。引き当て金を除いたオールインコストは1208ドル

・ 鉱山会社のヘッジ売りは103トンでその分供給が増えた。鉱山会社がヘッジ売りに回ったのは1999年以来2度目。

・ スクラップからの供給は13%減って、7年ぶりの低レベルで1125トン。ゴールドの価格が下落したことと経済が好調に転じたことが原因。




「鉱山生産」


ゴールドの鉱山生産は2%増加して3133トンで史上最高値を記録。6年連続の生産量の増加です。これはゴールドの価格が高かった頃投資されたプロジェクトからの生産が昨年まで増加し続けていたということです。中国だけは広い範囲での生産が増えていますが、他の大きなゴールド生産国は比較的最近に着手されたもしくは飛躍的に規模を拡大した大規模な鉱山からの生産が増加しました。ただ前年と較べると2014年の伸びは減少し、2015年はおそらく成長が止まると見られています。2014年の新しいプロジェクトへの資金投入は抑えられ、新たな鉱脈の探査費も削られています。ゴールド価格が生産のオールインコストの平均を下回る現在、多くの鉱山会社が既存のポートフォリオをいかにして最大限に利用するかに焦点があり、新しい金脈の探査や発掘にはやはりコスト割れの状態では、力を割ける状態ではありません。このような現状では鉱山生産量と利益率という観点から鉱山会社業界は危機的状況にあるといえます。


(ゴールド鉱山生産量の推移:トン)

「生産者のヘッジ売り」

昨年、生産者のヘッジは売り103トンと「供給」側に回りました。この項目は年によっては買い戻しが多く「需要」となる場合もあります。ドル高のために現地通貨建てのゴールドは上昇したところが多く、特に豪ドル建てはその効果著しく、豪州の生産者からの売りヘッジが増えました。また近年は生産者のヘッジブック(ヘッジのポジション)が極端に少なくなっており(つまり生産者はヘッジをしてこなかった。)、これは将来的にヘッジの必要がさらに増えてくる可能性を示唆します。


(ゴールドの生産者ヘッジの推移)

「スクラップからの供給」

スクラップからのゴールド供給は13%減少して1125トン。ゴールドの価格の下落率である10.3%と大まかに言って同じようなレベルで減少しています。この価格の下落によって、スクラップからの供給は数年ぶりの低レベルとなり、ゴールドのサプライ全体の26%にまで低下、これは7年ぶりの低水準です。2009年のピーク時にはスクラップからの供給は42%もありました。先進国はゴールド価格が下がり、経済の見通しが明るくなったことなどから、近年ではもっとも大きなスクラップの下落となりました。北米と欧州はそれぞれ22%と17%のダウンとなり、北米では特にe-waste(電子材のスクラップ)のリサイクルが目立って減っています。インドの宝飾スクラップは26%の減少となり、過去3年ではもっともその数量が減りました。中東では15%の減少で、やはりゴールド価格の低下とスクラップ自体の減少が原因。例外は東アジアで、1%ながらスクラップ量増大。中国は12%と大きな伸びを示しており、この数字が年間の世界のスクラップ回収の数字を上げていると言えます。中国では消費者の買い意欲が大きくなかったこと、そして宝飾からの売り戻しが目立ちました。


(ゴールドスクラップからの供給)

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岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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