ドイツのゴールド買い
ゴールドの圧倒的需要国は皆さんよくご存知の通りインドと中国ですが、地金や金貨の分野(宝飾品ではなくゴールドバーの投資の需要)でそれに続くのはドイツです。上のグラフはWGCの Gold Demand Trend 2015からの第一四半期の数字。欧米諸国の中ではドイツが32.2トンとダントツの量を買っています。先日の東京ゴールドフェスティバルでも、近年のドイツでのゴールドの需要が話題となりました。インドや中国が人々の目を奪っている影で実は、ドイツ、そしてスイスなどでは特に個人投資家がゴールドバーに投資をしているのです。ドイツの32.2トンという量は、世界的観点からみても、中国の59.7トン、インドの40.9トンに次ぐ世界第三位の規模になっています。タイやベトナムといったアジアの諸国をはるかに上回る量のゴールドをドイツは買っています。またスイスもタイ、ベトナムについで13.8トンものゴールドを買っています。
この傾向が顕著になりだしたのが、リーマンショックの2008年からです。インドを除く各国のゴールド需要はこの年に大きく伸びていることがわかります。
この需要の変化の背景にあるのは、金融危機による地域経済(ユーロ圏)、通貨(ユーロ)に対する不振が、ドイツやスイスのような(スイスはユーロではありませんが)優等生的国々の国民がユーロの信用について疑問を抱き、その価値が無くなることのない現物投資としてのゴールドに資金を移動させているのです。特に近年はギリシャ、スペイン、イタリアといったユーロ圏南欧の国々の経済が危機を迎えており、それを支える形のドイツの国民たちに不安が広がっています。政府や通貨が究極的な信用を無くするという恐れの中、特に優等生ドイツにとっては迷惑この上ない話であり、この先どうなるかわからないユーロを売ってゴールドを買うという動きが顕著になっています。ドイツ国民は第一次世界大戦、第二次世界大戦と二回の大戦を経て、終わりなき通貨の発行が行き着くところは一箇所。つまりハイパーインフレであるということを身にしみてわかっているのではないでしょうか。その頃と同じような不安を人々は抱き始めているのかもしれません。世界のゴールドの需要は確かにインドと中国によって牽引されていますが、欧米の先進国の中でももっとも健全な経済を持つと思われるドイツの国民がこぞってゴールドを買っていることを我々は軽んじるべきではないかもしれません。