中国のゴールド現物の動き
ゴールド価格は1070-80ドル辺りで底を打ち、現在は1130ドル前後での推移となっています。FRBの利上げがおそらくは来年までずれ込みそうな状況になってきており、ゴールドの下値不安も若干和らいできています。
今週はこの状況においての中国のゴールドの状況を見てみましょう。2013年はまさにゴールドマーケットでの中国の「爆買い」がゴールドマーケットの最大の話題でしたが、2014年そして2015年とパタッとその勢いが止まっています。いえ、止まっているように見えます。実際、少なくとも我々のような海外の現物トレーダーの立場でいうと、あれだけ買っていた中国の買いはパタッと止っているのです。しかし、中国内部の数字を見てみると、なんだかちょっと変なのです。本当のところがいまいちよくわかりません(どうどうと書いてすみません。笑。)。しかし、どう考えても大きすぎるような量の現物が動いているようなのです。何かその裏にカラクリがあるとは思うのですが。とりあえず表から見える現象面だけでも紹介しておきましょう。
「SGEのゴールドデリバリーが2013年を超えている」
2015年7月、中国は突然ゴールドの保有量の変更を発表しました。2009年以来の6年ぶりの発表で、2015年6月のゴールド持ち高は1054トンから1658トンへ、604トンの増加となり、単純に平均すると一年に100トン前後ゴールドを買っていたことになります。7月は19.3トン増加し、8月は16トン増加し、彼らのゴールド保有の合計は1693トンとなりました。その中国で、最近SGE(Shanghai Gold Exchange : 上海黄金交易所)からのゴールドの現物引き出し(デリバリー)が大きく増えています。
9月14日の週の現物の引き出しは約63トン。25日の週は約66トンと二週間で129トン、年間でこれまで1958トンものゴールドがSGEからデリバリーされており、このペースで一年間の量を計算すると2650トンとなります。このSGEからの現物デリバリーの量は現時点で較べると昨年の37.2%増で、史上最高であった2013年のペースよりも17.8%も多い驚異的なペースとなっています。
そしてComexの香港キロバー取引(これは今年の3月から開始されました。)が、今年3月の取引開始からこれまで、565トンものキロバーがデリバリーされています。香港のキロバーが中国に向かっているとすれば、その量は9月末で1958+565=2523トンということになります。これが年末までもこのペースで増加して、インドも年間1000トンのゴールドを買うと考えるとその総計は4000トンを優に超えて、世界のゴールド鉱山生産量(3000トン:2014年(GFMS))をも上回ることになります。
こんなに多くの現物が中国に向かっているとするならば、もう少しマーケットが盛り上がってもおかしくないはずですが、我々はマーケットの中にいてまったくそのような感じがしません。いったい何が起こっているのか。報道されているニュースの中に習近平がWSJとのインタビューで、「外貨準備の中の一部の資産は中央銀行から国内の銀行、企業そして個人に移転されている。」との発言がありました。これは意味深な発言だと取ることができます。
実際にゴールドが中央銀行から民間に流れているかどうかは別として、今回の600トン増の話が出る前に、中国のゴールド準備高は少なく見積もっても2800トン。個人の保有分は5500トンという見積もりもありました。
そして今年6月の上海でのLBMA Forumの中でChina Gold Associationのチェアマンが、中国のゴールドの埋蔵量は9800トンあると発言しています。
真実はおそらく中国のみぞ知るなのでしょうが、中央銀行、民間銀行(ほとんどが究極的には国有ですね)、そして企業、個人がこの大量のゴールドを吸い込んでいるというのが実体なのでしょう。中国、買っていないようで実はゴールドを買っているのですね。