ICBC Standard Bank Metals View Points 2
先週の続きで各メタルをもう少し詳しく。今週はゴールドとシルバーの視点を。
「やはりまだアメリカの金利の行方が大切 ? 利上げは市場にまだ織り込まれていない」
・世界金融危機以来、米国の実質金利の予想がゴールド価格に与える影響は非常に大きい。
・米国の実質金利は機関投資家にとってはもっとも重要な変数であり、経済成長、インフレ、通貨政策、そしてドルの行方を占う材料である。
・FRBが12月に利上げをすれば(これは我々の見方の中心にあるが)、ゴールドは今年のここまでの安値である1070-75ドル近辺まで下げると予想する。
・このレベルを下にブレイクするかどうかは、米国の投資家の売りに匹敵するだけの実需の買いが生まれるかどうかにかかっている。
・もしFRBが年内に利上げをしなければ、ゴールドにとってはより強気な環境となる。
・しかしゴールドの上下の動きは上昇はゆっくり、下落は速くということになろう。
「地上では向かい風 ? まだ生産量はピークに達せず」
・需給のバランスは、他の産業用のメタルのようにはゴールドには影響しない。
・しかし、「ピークゴールド(鉱山生産がピークを打ったこと)」のレポートは心理的な影響をもたらすかもしれない。
・Standard Bankによる詳細な調査では、少なくとも2020年まではその生産量は減少しないという結論。
・鉱山会社のヘッジ売りは、ゆるやかながらも復活しつつある。生産国通貨の下落とプロジェクトファイナンシングの条件が厳しくなってきたのがその要因。
・スクラップからの供給はまた他通貨安のため増加。代表的な通貨はトルコリラ、そして東南アジア各国の通貨など。
「需要は厳しい一年、2016年は改善する可能性も」
・インドの政策の変化とルピーの変動は、インドのゴールド卸売り業にとっては困難な時間となった。
・経済の先行きが怪しいために宝飾品の売上は控えめなものになった。
・ゴールドのマネタイゼーションスキーム(国民が持っているゴールドを銀行で預かり、それを「現金化」し、タンス預金を経済に組み込む仕組み)やゴールドボンドスキーム(ゴールドで裏打ちされた債券の発行)がうまくいくとは思えないが、インド政府は過度な輸入は阻止したい模様。
・中東のゴールドマーケットは政情不安と価格の大きな変動の影響を受けている。
・中国の宝飾需要は、新規店舗開店の減少、贅沢品の売上不振、そしてゴールドの使用量を減らすということで、ゴールドにとって厳しい状況にある。
・金利の低下や、より厳しくなる資産運用投資商品への圧力により中国のゴールドリース市場も低調。
・資金の外への動き、発表されていないゴールドの流れのためかもしれない。
・中国の経済の安定化は宝飾の売上と投資需要のなだらかな成長をサポートする。
「Silver」
「個人投資家とETFは長期保有」
・金銀比価73:1 は高いように見えるが、シルバーに有利に動く前には80:1まで行ってもおかしくない。
・ETFのほとんどはシルバーが10ドルから16ドルの間で始まっている。そのため、想像よりも損をしているポジションは少ない。
・個人の投資活動は長期的な様相であり、比較的価格に敏感で、ゴールドと較べるとポートフォリオの小さな部分でしかない。
「インドの需要がエチレンオキシド(ethylene oxide)の減少を補う」
・インドのシルバー輸入が、ゴールドの輸入に関する関税とその仕組みが変わってから急増している。
・シルバー宝飾のマーケットは成長しているが、この輸入増を吸収するほどではない。
・輸入された量が消費を表しているわけではないが、そのシルバーの量は非常に印象的。
・インドの輸入量は、特に中国でのエチレンオキシド(EO)の生産施設への投資が盛り上がったころはそれを相殺する動きであった。
・中国のEOマーケットは価格低下と生産過剰で苦しいときを迎えている。