シルバーの採算コストとベースメタル
今回はメタル調査会社Metals Focus レポートからシルバーとベースメタルの関係について見てみます。
シルバーは複雑な生産コスト体系です。というのもその大きな部分が、他のメタルと一緒に掘られているからです。2014年のシルバーの鉱山生産約27,000トンのうち、53%が非鉄地金、いわゆるベースメタルの副産物として生産されています。主に鉛、亜鉛そして銅の生産時にシルバーも含まれています。そして17%はゴールドの副産物として生産され、シルバー鉱山(生産物の中でシルバーからの収入が最も多い鉱山)からの生産は30%に過ぎません。この生産の「多様性」のためシルバーの採掘コストは、他のメタルのような直接的な生産コストと比べるとはっきりとしないということになってしまいます。しかし、ここ一年のベースメタルの下げはきつく、銅と亜鉛は6年半振りの安値に落ち込み、この安値がシルバーの生産にも大きな影響を与えています。
ここ数ヶ月、ベースメタルの生産の削減が進められており、特に亜鉛にその傾向が高いのですが、亜鉛は鉛とあわせるとシルバーの鉱山生産の3分の1を占めています。10月上旬には経営危機に陥ったGlencoreが、オーストラリアとペルーの2鉱山での亜鉛生産を停止、またその他のオーストラリアとカザフスタンの鉱山も生産量縮小を計画しており、これらの結果、亜鉛が50万トンの減産となり、Glencoreのシルバー生産は190トン近く減少することが予想されています。また、同じく10月中にメキシコの最大手産銀会社Penoles(ペニョレス)は洪水の影響で、2014年前半に58トン生産した鉱山を停止しました。その他の鉱山会社も鉱山の生産停止や見直しを行いつつあり、メタル価格の下落の勢いが大きくなってきた現在そして将来にもより多くの鉱山の閉鎖がありそうな状況です。
2014年のシルバーの副産物としての採掘コストをMetals Focusが計算したのが下のチャートです。
シルバー鉱山からの生産と副産物としての生産を各メタル別に表示してあり、その生産コストで並べてあります。これによると35%(220moz=約68トン)の部分が現在のシルバー価格である14ドルを上回っており、この部分は損失を出しているということになります。この部分で目立つのはゴールドの副産物としてシルバーです。一方、シルバー鉱山からの生産と銅鉱山からの副産物としてのシルバーのコストは低いことが分かります。特にシルバー鉱山からの生産がほぼ60%を占めています。
しかし、ここで一つ注意すべき点は、メタルの価格が下がると同時にその生産コストも下がっているということです。エネルギー(石油)や電力そして人件費が下がっており、生産のコストは確実に2015年の9月までは前年よりも10%は下がっています。また、生産国通貨がドルに対して安くなっていることも生産コストが下げをサポートしている要因でもあります。2015年そして来年2016年もシルバーの鉱山供給は1?2%下がるであろうと予測されています。長期的にはこのシルバーの供給不足は需要の伸びもあいまって構造的なものになりそうであり、それがシルバーマーケットの下支えとなるのではないでしょうか。