WGC 2015年の振り返りと2016年の見通し
年末に際し、WGCが今年の回顧と来年の展望を発表しているので、今週はそれを見てみます。今年一年の振り返りと、そして来年に起こりそうなことが書いてあります。良い参考になりますね。
「WGC 2015年の振り返りと2016年の見通し」
「概要」 2015年はゴールドマーケットにとって非常に興味深い一年となりましたが、今大きな問題は、では来年の世界のゴールドマーケットはどうなるのか?ということです。
2012年まで
2012年までゴールドは10年にもわたった上昇相場を謳歌してきました。その要因は以下の通り。
●新興国のマーケットの発展が消費者需要を呼び起こし
●保有資産の多様化のための中央銀行のゴールド買い
●金融システムの進化でゴールドが買いやすくなったこと
●世界的な金融危機とその後の混乱
過去3年間
過去3年間のゴールド価格の動きは、米国経済の回復基調、そしてその反面新興国経済の不調への懸念から下落することとなりました。
●米国経済の好調は、6年半ぶりのFederal Fund Rateの利上げを可能にし、これがドルを押し上げ、その結果ゴールドに対しては売りプレッシャーとなった。
●ドル建てゴールドは10%下落。投資家の心理は弱気、投資家ロングポジションの平均は2003年からの最低レベルにあり、ETFからの売りは弱まったとはいえ続いている。
●WGCの見方では、米金利上げはもはや1年半以上マーケットは予想しており、ほとんど織り込み済み。
米ドルはゴールド需要の一つの要因ではあるが、それがいつも投資家にとって最も大事な要因というわけではない。実際、WGC のリサーチでは、金利が高くなっても、それは必ずしもゴールドにとって弱気な材料ではない。
●ゴールド現物の実需需要は世界規模であり、90%がアメリカ以外、主にアジア、特に中国とインドからのものである。
●これらの国ではそれぞれの通貨建てのゴールド価格がもっとも大事であり、2015年はドル以外の他通貨建てのゴールドはあまり下げず、上がったものある。
●米国の金利上げによって、一時的に相場が下げることがあっても、それは価格に敏感な中国やインドのようなマーケットでの需要をより刺激することになる。
●その影響はすでに現れており、中国ではSGEが人民元建てでのゴールドの取引を促進することを望んでおり、インドではゴールド取引所の設立を検討中である。
2015年、世界のゴールドマーケットではいくつかの継続している流れがある。
●アジアのマーケットは世界のゴールド需要の中心であり続けている。インドも中国も第3四半期は前年比増。
●地金とコインの需要は金融危機以前の2倍以上に増加。特に欧州では危機以前はほぼまったく無かったものが、今や確固と した投資対象になっている。
●リサイクルからの二次供給は減少。鉱山生産の伸びはほぼ止まる。
●インド政府は「ゴールド・マネタイゼーション・プラン」を導入。ゴールド債券とゴールドコインの発行により、 約22,000トンと見られているインド人民が抱えているゴールドのストックを市場に還流させるため。
●中国では大きな変化はなし。6月から始まった中央銀行である人民銀行のゴールド準備への数量の変化の発表は、透明性の強化ということで、評価されている。8月11日12日の人民元引き下げにおいて、人民元安に対する防衛策としてのゴールドの役割は証明された。
現在のゴールドの下げにも関わらず、2016年のゴールド需要の見通しは「楽観的」。
●ゴールドは「ヘッジ」として非常に効果のある資産であり続ける。米国や他の地域での株価が高止まりしている現在、投資家は低金利の世界でリターンを求めるためのリスクポジションが増加しているから。
●新興国のGDPの伸びに対して不安が出ているが、経済活動による生産は増加しており、それにより収入も伸びている。このため、ゴールドは長期戦略的な資産として、また財産の保管方法としてより重要になってくる。
●主要なアジアのマーケットでは、今後もさらなるゴールドに好意的な政策が取り入れられる可能性が高く、インドではゴールド取引所が設立されるであろう。
●SGE(Shanghai Gold Exchange)では海外のプレイヤーに対する中国ゴールド市場開放としてのインターナショナルボー ドの導入に続き、人民元建てのゴールド価格を地域(アジア)の指標価格にすべく「人民元建てゴールドプライシングメカニズム」を2016年には導入する予定。