ゴールドコラム & 特集

2015年の相場回顧と新年の動き

また一年が過ぎ、新たな一年が始まりました。この「ゴールドディーリングのすべて」もまた新しい年に。今年もまたよろしくお願いします。

まずは2015年の先物市場のパフォーマンスです。これを見るとコモディティにとっては非常に逆風の一年であったと言えます。菜種油(Canola)、ココア、冷凍オレンジジュース、綿といったソフトコモディティに例外がありますが、その他の「コモディティ」は大きな下落の一年になりました。中でもブレント、灯油、WTI、天然ガスといったオイルエネルギー関連商品は40%前後もの下げを記録しています。その次に目立つのがPGM、プラチナとパラジウムです。パラジウムは-30.63%、プラチナは-26.57%それぞれ下落しました。非鉄では銅が-25.28%と大きく下げています。シルバーが-12.61%、ゴールドは-10.43%の下げでした。そしてコモディティ以外では、米ドル以外の通貨、カナダ、ニュージーランド、ユーロ、オーストラリア、英国と上場されている通貨だけでも大きく下落、先物市場に上場されていない通貨も軒並み昨年は下落しました。つまり昨年は米ドル一人勝ちの一年だったと言えます。上げたのは何かと見てみると、菜種油とココアについで上がっているのは欧米の株価指数、そしてやはり米ドルで、日経平均などの株価のインデックスと米ドルが軒並み上位にランクされています。米経済の雇用の回復、それに伴う世界的な株価の上昇、新興国から米国への資金還流、新興国通貨やその他通貨そしてコモディティから米ドルへの投資資金の移動が、はっきりと反映されています。

2015年は個々のコモディティのファンダメンタルズというよりも、まさにマクロの経済の流れ(米国の金利上げ、それに対するその他の国々の一段の金融緩和)により、新興国やコモディティという分野全体から資金が米国に向けて移動したと考えるべきでしょう。

12月に実際に米国の金利が上がり、各コモディティ、通貨はとりあえずの底を打ち、年初から昨年の巻き戻しのような動き、つまりドル売り、他通貨及びコモディティ買いの動きが見られます。そして降って湧いたようなサウジアラビアとイランとの緊張。サウジアラビアでのシーア派指導者の死刑執行からのイラン国内でのサウジアラビア大使館乱入がきっかけではありますが、どうも原油価格の下落により国内情勢が思わしくないサウジアラビアの国内引き締めという意図が感じられます。国家予算の8割を原油の輸出に頼るサウジ王制はあと15年で輸出する原油がなくなるというレポートも出ており、国家体制の変革を迫られていると言えるでしょう。今回のイランとの断交はそんな国内の政情不安を海外での危機にすりかえ、とりあえずの安定を模索しているのではないかとさえ思えます。

そして年初からの中国株の7%急落を受けて、世界の株式の下落、それに対するsafe haven的なゴールドの買い。今年は昨年膨らんだドルロング・他通貨及びゴールドショートが、マクロな金融情勢そして世界、特に中東の政治的状況と中国の経済情勢などを受けてどのように行動するのかが、まず最初の材料になりそうです。そういった意味ではとりあえず米国の金利材料は薄くなったと思います。(もちろん、今後の世界経済の状況によっては再び「利下げ」なんていうシナリオでまた米国の金利が注目されなおす可能性もありますが。)マクロ経済と世界情勢という意味ではやはり中国経済の今後の動向とISの脅威に加え、サウジアラビアの政治状況も新たな世界の不安定材料になりそうです。2015年よりもゴールドの出番は増えそうな予感がします。

「米国上場先物商品 2015年のパフォーマンス」



「2015年のレンジ」


Gold


(円建てゴールド&ドル円)


Silver


(円建てシルバー)


Platinum


(円建てプラチナ)


Palladium


(円建てパラジウム)


岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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