上場商品のパフォーマンス
今週は年初来の投資商品のパフォーマンスを見てみましょう。下のグラフは2016年の年初からの米国の先物商品(金融商品も含む)の騰落率です。
今年に入って上昇しているのは、VIX(Volatility Index:恐怖指数、シカゴオプション取引所のボラティリティインデックス。S&P500のオプションボラティリティを元に算出)が約19%上昇しており、これが今年ここまでのパフォーマンスのトップ。ゴールドはそれに次ぐ17.4%の上昇となっています。この二つがずば抜けたパフォーマンスとなっています。3位のLean Hogs(豚(赤身豚肉)先物!)と9位のLumber(木材)、12位のLive Cattle (生牛)以外は全て、恐怖指数と債券(米国債)、貴金属(ゴールド、プラチナ、シルバー)、そして通貨(日本円、カナダドル)となります。このラインアップは一目見れば分かりますが、まさに投資家が不安なときに買ういわゆるディフェンシブ(defensive;守備的な)ものばかりです。VIXやゴールドはその代表格ですが、リスクオフとして目立って買われている通貨は日本円、カナダドルそして米国債は短いものから長いものまで満遍なく投資家によって買われていることが分かります。シルバーは8.26%、プラチナは4.98%それぞれ上昇していますが、昨年下がりすぎた分、同じ貴金属であるゴールドに引き上げられている分があるにしても、立派な結果となっています。
逆に下がった方を見てみると、Natural Gas (天然ガス)の価格がほぼ例外と言えるほど(30%)大きく下がっていますが、その他の年初からの下落した商品を見てみると、やはり株式指数が軒並みマイナスになっています。中でも最も大きく下がったのは日経平均で―15%。NYダウ、S&P、ナスダック、などなど、米国で先物上場されている株価指数は全滅、コモディティでは大きく下がった原油を代表とするエネルギーが軒並み下落。また農産物(オーツ麦、オレンジジュース、米、綿、コーヒー、ココアなどなど)もリスクオフから軒並み売られています。通貨は豪ドル、ニュージーランドドルなど一次産品の価格の影響の大きい通貨が売られています。そんな中、貴金属としてはパラジウムだけが、年初来12.4%も下がっており、ゴールド、シルバー、プラチナとは完全に切り離されたものになっています。
これを1年というタイムスパンで見てみると大きく違ってきます。つまり、一年前、商品の売りが強かった時からのパフォーマンスです。
一年前からの変化を見ると先物市場に上場されている商品は圧倒的に下落しているものが多いのがよく分かります。そんな中、最も上昇したのはVIXでした。なんと37.44%の上昇となっています。その次は豚。PEDという豚の病気でここ数年豚の価格は上昇しており、それが続いているということです。金融商品では米国30年国債、そして日本円。貴金属ではゴールドがかろうじてプラス、あとはやはり長期・短期の米国債がかろうじてプラス。しかし、下落した商品を見ると、まずその数の多さに圧倒されます。ほとんどの上場商品が過去一年で下がり、それも20%を超えるような大きな下げを記録している商品が10商品以上あり、中でもエネルギー関連の商品、Natural Gas(天然ガス)、Heating Oil(灯油)、Crude Oil Brent(ブレント原油)は軒並み50%近い下げを記録しています。その次はCrude Oil WTI(WTI原油)であり、下落率のワースト4は全てエネルギー、原油関係ということになります。そして、それに続くのがパラジウムで、一年で38.75%の下落となっています。
この二つを見比べると、2016年に入ってから、多くの商品が買い戻されてそのパフォーマンスが上昇しつつあります。今年は昨年とまったく対象的なマーケットがこれまで展開されています(ドル売り戻し、株価の下落、商品の上昇)。昨年のパフォーマンスが悪かった商品ほど、逆にパフォーマンスが上昇する一年になりそうです。そういった意味ではこのように長短のパフォーマンスを比べることは今後のマーケットを占う上での参考になると思います。