ゴールドと株価の逆相関が史上最大に
今週はゴールドと株価の相関(逆相関)の関係を見てみましょう。
過去60セッションベースのComex GoldとS&P 500の相関関係はマイナス0.61。相関関数は1からマイナス1の間で表現され、1は完全な相関関係、0は全くの無関係、マイナス1は完全な逆相関を表します。
マイナス0.61は非常に強い逆相関を表します。これは過去10年を振り返っても最大の逆相関になっており、30年の平均を見るとマイナス0.06ということからも現在のこの状況は特異と言えるかもしれません。つまり、今はゴールドが上がると株が下がり、株が上がるとゴールドが下がるという逆相関が非常に強いということになります。
ここにきてなぜこれだけ逆相関が強くなっているのか、その理由は、米国債の「前例のない低金利」にありそうです。ゴールドはマイナス金利債券に対する「最も自然な防御」です。超低金利もしくはマイナス金利の時には、相対的にゴールドの魅力は増えることになり、資金が流入します。一方、株式は金利の上昇と共に上昇する傾向にあります。それは株式と債券がお互いを補完する位置にあり、経済成長は金利と株価を押し上げる傾向にあるからです。
この話は抽象的に聞こえるかもしれませんが、資産分散(Asset allocation)という観点から考えると、この「相関性」というのはポートフォリオの構築においては非常に重要な「現実」の考え方なのです。たとえば資産Aと資産Bの二つの資産があり、その両方が10%のリターン、20%の標準偏差であるとします。もし資産Aだけのポートフォリオを組むと当然そのリスクリワードは資産Aと全く同じです。ところが資産Aと資産Bを半分ずつ組み込んだポートフォリオにするとどうなるでしょうか?ここに「相関性」の考え方が出てきます。
もしAとBの相関性が1であれば、AとBを混ぜる意味はまったくありません。なぜならば両方まったく同じ動きをするからです。もしAとBの相関性がマイナス1であれば、お互いがお互いの動きを打ち消し(完全なるヘッジ!)、このポートフォリオはまったくリスクがないということになります。(損失も利益も期待できない)つまり金融的考え方をすれば現金を投資せず、そのまま所有しているのと同じことになります。もしAとBの相関性がゼロであれば、期待利益は10%のままですが、変動率は下がります。
ゴールドと株式の強い逆相関を考えたとき、この両方をポートフォリオに入れれば、株式だけをポートフォリオにするよりもよりよいリスクリワードを期待することができます。ただゴールドの変動率は最近S&Pの2倍に近いので、ポートフォリオ全体での変動率が下がるとは言えませんが。現在この二つの資産の逆相関性が過去最高のレベルになっているということは、ポートフォリオを考える上でゴールドを組み入れるさらなる理由になるのは確かです。今年はそういう考えでゴールドを買っている投資家も多いのではないでしょうか。