Silver 実需の不調の中での価格の堅調推移
シルバーの値動きがここのところ冴えません。その最大の理由は最大の消費地であるインドと第二位である米国の需要の不振があげられます。2015年はこの二国で世界の現物需要の75%を占めていましたが、今年は大きな減少で、6年ぶりの低水準に沈んでいます。これだけの実需の落ち込みにもかかわらず、今年、シルバーは大きく上昇しました。その上昇の原動力となったのは、いわゆるプロの投資家(ファンドマネジャーなど)の買いでした。そのため、実需の不振そのものは大きな下落要因にはならないと見られていました。
8月のインドのシルバー輸入量は131トンでした。これだけでは分かりにくいですが、年初からの累計を見てみると2348トンで、これは前年同期比でなんと50%も減少しています。しかし、宝飾品や工業用需要は若干ながら増加しており、結果的に輸入シルバーの減少は個人の現物投資の大幅な落ち込みと言うことができそうです。シルバーは税務当局を逃れた個人の富を守るために買われていました。今年後半は祭礼と結婚の時期がやってくると需要も伸びてくると思われますが、まだ年内に大きくシルバーの現物の輸入が伸びることはなさそうです。というのもトレーダーたちはまだ大量の在庫を抱えているために、まずはその在庫が捌けなければ、本格的な輸入もないでしょう。
米国に目を向けると、過去2ヶ月に発表された米造幣局の売り上げが劇的に縮小しています。しかし、その兆候は2.8moz (約87トン)の売り上げだった6月には出ていました。この造幣局のイーグルコインの買いはあくまで業者の買いであり、個人投資家の買いではないということに注意しなければなりません。
6月のマーケットの状況は既に非常に弱いものとなっていましたが、業者筋は新たに発行されたコインを買い続けました。シンプルに言うと、業者たちは自分たちに与えられた割り当てを減らしたくないからそうしたのです。これまで何度もあったように需要が盛り上がり、イーグルコインの販売数を買いたい人の数が上回った時にその割り当てを確保し、より大きなプレミアムを享受できるようにしておきたいというものです。しかしながら個人投資家への販売の不調と業者の在庫の増加があまりに急であったため、業者は結局新規に買いを入れる余裕はなく、7月と8月は買い入れを減らすことになり、それが7月と8月の米造幣局の売り上げを大きく減少させる要因となりました。
年間で見るとイーグルコインの売り上げは20%の減少見込みであり、過去4年間での最低レベルになります。これは以下の二つの点が反映されていると見ることができます。一つは米国の個人投資家が高いレベルの在庫を抱えていること。(2010~2016年の間に売れたイーグルコインは約8400トンにもなり、メイプルリーフや、その他のブリオン型コインを含めると12860トンにも達すると見られています。)そして、おそらく個人投資家たちは、21ドルの壁をシルバーが超えられなかったことにちょっと嫌気がさしてきているのでしょう。
今年のシルバーのここまでのマーケットはあくまでプロの投資家の買いによる上昇でした。実需はほとんど関係していなかったし、おそらく今年のこれからも同じ状況が続くと思われます。米国での超低金利、そして他の国々でのマイナス金利という状態はやはり投資家をゴールドやシルバーに向わせるものです。ゴールドもシルバーも実需の現物買いがほとんど無い中、上昇してその値位置を保っているというのがその証左です。2016年後半にかけても基本的にこの状態は変わらず、あるとそればやはり上昇の可能性が強そうです。