パラジウムはプラチナを超える
プラチナはディーゼル車、パラジウムはガソリン車の排ガス触媒に使われます。そしてご存知の通り、自動車の売り上げは、中国、北米、そして日本の三大マーケットではガソリン車が圧倒的な存在です。歴史をひもとくとパラジウムによるガソリン車の排ガス処理は1970~80年代に、そもそもその昔、自動車自体を商業化したフォード社によって、始まりました。ガソリン車において、高いプラチナを利用した触媒の代替に安いパラジウムを利用を1980年代後半からフォード社が開始したのです。それ以来、世界で生産された自動車の量は倍増し、パラジウムの触媒への利用量は3倍になりました。2015年の数字を見ると、パラジウムの需要はもはや、自動車触媒では圧倒的に、そして総需要でもプラチナを上回ります。パラジウムの需要の中で自動車触媒の占める割合は約7割、それに対してプラチナは約4割に過ぎません(2014年)。そしてプラチナには需要の約3.5割の宝飾品がありますが、その8割を占める中国の不振により、宝飾品需要は激減しています。つまり現在の足元の需要は、パラジウムはガソリン車からの触媒需要できわめて好調、一方プラチナはディーゼル車に限られるために、自動車触媒での需要はパラジウムに比べると少なく、もう一方の柱である宝飾需要は振るわずという状態で、旗色が悪いことは否定のしようがありません。
「自動車触媒としての存在意義の違い」
少し長めのスパンで相場を考えてみましょう。これからゴールドがどこに行くのか、プラチナはもう上がらないのか、なかなか難しいのですが、ひとつだけ、これはほぼ確実ではないかと思えるのは、パラジウムがプラチナをここ数年で超えるのではないかということです。過去10年のチャートを見てみましょう。上がパラジウムとプラチナの動き、下はプラチナの価格をパラジウムの価格で割ってその割合(比価)を出したものです。過去10年間、プラチナとパラジウムの価格の関係は最高で5.5対1(2008年南アの電力危機の時)から直近では1.4対1と大きくその値差は縮小してきています。
「地上在庫と需給バランス」
パラジウムの地上在庫は2011年から減少の一途にあります。需給バランスでの供給不足が続いており、その分地上在庫は使い込まれて減少しているのです。パラジウムの供給不足の傾向はこの先も続くことが予想されており、ガソリン車の売り上げの好調を背景に需要も強く、今後さらにその供給不足がクローズアップされていくことになると思われます。こうなると自然の成り行きとして、早ければあと数年でパラジウムの価格はプラチナを上回る可能性が非常に高いのではないでしょうか。
惜しむらくは、個人投資家がパラジウムに投資できるツールが今のところ少ないことです。Tocomにはパラジウム先物が上場されていますが、流動性はほとんどなく、地金商ではパラジウムの投資用地金は販売していません。唯一可能性があるとすればETFでしょうか。ただ、もし予想通りパラジウムがプラチナを逆転するような事態になるとすれば、それに呼応して、投資環境も整備されていくことを期待したいところです。
これは明らかにプラチナとパラジウムの置かれた立場の違いが反映されており、このまま行くとほぼ確実にプラチナとパラジウムの価格の逆転がありえるのではと考えます。