CME(Chicago Mercantile Exchange)の新しい上場商品
これまであるようでなかった商品がとうとうCMEで10月24日に上場されました。
Gold/Silver Ratio Futures(金銀比価)
Gold/Platinum Spread Futures(ゴールド-プラチナ・スプレッド)
Platinum/Palladium Spread Futures(プラチナ-パラジウム・スプレッド)
の3商品です。
これはその名前が示すとおり、各貴金属の値差(ゴールドシルバーは比価)を直接取引するものです。これまでは例えば金銀比価で、シルバーが割安と考えたときは、シルバーを買って、ほぼ等しい金額になるゴールドを売るというふた手間の取引をしてその比価を取引していましたが、この商品が出来たおかげで、比価をそのまま直接取引できるようになります。ゴールドとシルバーを両方取引することなく、これひとつで自分の欲しいポジションが持てるようになりました。またこれらの商品は現金決済であり、実際のメタルの受け渡しの心配もありません。今までどうしてなかったのかが不思議に感じるほどです。後追いでも構わないからTocomもスプレッド(現金決済)をスポットベース(東京ゴールドスポット100のように、毎日ロールオーバーベースでいつまでもポジションを持てるような設計)で上場すれば面白いのではないかと思います。
・Gold/ Silver Ratio Futures (金銀比価)
金銀比価とは、ゴールドの価格をシルバー価格で割ったもの。つまりその比率です。あまりに単位が違うためにスプレッド(価格差)絶対値よりもその比率で表すことが一般的です。
過去10年の動きでは、金銀比価は1:30(つまりゴールドはシルバーの30倍)から1:84と大きくその価値が動いており、平均は1:61です。トレーダーの中にはこの比価を好んで取引する人が沢山います。確かに単に単品の相場の上げ下げに賭けるよりも、リスクという意味では少なく、過去の比価からの割高割安もはっきりしており、手掛けやすい商品だといえます。もちろん、金銀比価に論理的に正しいという数字は一切ありません。ただ過去の流れを見ると現在が割高か割安かは誰にでも分かります。今年はおそらく史上最大である1:84というゴールド高・シルバー安になってしまったこともあり、より多くの人がこの比価に注目しています。下がったとはいえ、まだシルバーはゴールドの70分の1しかありません。
・Gold/Platinum Spread (ゴールド-プラチナ・スプレッド)
ゴールドとプラチナはその価格も近いことから比率ではなく、実際のスプレッド(値差)の実数が使われています。現在はプラチナよりもゴールドの方が高い、いわゆる逆転現象の真っ只中です。今回のゴールドとプラチナの逆転関係が始まったのは、2015年年初からですからもうすぐ2年になろうとしています。その間に最大の逆転幅(ゴールドのプラチナに対するプレミアムは330ドルであり、現在は再びそのレベルへ近づきつつあります(317ドル)。過去10年の平均を見てみるとプラチナのプレミアムは192ドルです(現在は平均よりも509ドルもゴールドが高く、プラチナが安いということになります)。過去10年間のプラチナの最高プレミアムはなんと1241ドルです。歴史的に見ると現在のプラチナが安いことに驚きます。しかしながら、現在のプラチナのディスカウントはまだしばらく続きそうです。その根底にあるのは南アランド安、投資家のゴールド一極集中、中国の宝飾需要の不振などがあります。これらの条件が改善するときが、再びプラチナがゴールドよりも高くなるときでしょう。希少価値は20対1です。この状況が永遠に続くとは思えないのですが。
・Platinum/Palladium Spread(プラチナ-パラジウム・スプレッド)
金銀比価やゴールド-プラチナ・スプレッドに比べると一般的ではありません。特に日本で同じ白金系メタルであるプラチナとパラジウムのスプレッドを注視している投資家はそういないと思います。下のチャート(これは比率です)。を見れば分かりますが、過去10年間、特に2010年辺りからは、この2メタルの値差は縮小の一途にあります。2009年には一時5.5倍近くまでプラチナとパラジウムの差が開いたことがありましたが、現在はプラチナはパラジウムの約1.5倍です。この傾向は今後も続きそうであり、個人的にはそう遠くない将来にプラチナとパラジウムの価格が逆転してもおかしくないのではと思います。パラジウムが3年以上連続で供給不足状態にあること。南アの生産が3割でロシアが4割と南アのランド安の影響が比較的に軽微であること。その需要の7割は自動車、特にガソリン車の触媒であり、中国、北米、日本といった自動車需要大国での需要はプラチナよりも圧倒的にパラジウムであることなどがその理由です。