ゴールドコラム & 特集

2016年プラチナの需給

「供給」

先日WPIC(World Platinum Investment Council)から「Platinum Quarterly Q4 2016」が刊行されました。その中から抜粋して紹介します。

2016年第4四半期(Q4)の世界のプラチナの生産量は1500k toz(約47トン)以下に落ち込み、前年同期比7%の減少となりました。この主な原因は南アの精錬所の生産減であり、南アの生産自体は11%の落ち込みとなり、1065k toz(約33トン)で、世界のプラチナ供給の70%に当たります。第3四半期(Q3)と比べても9%の落ち込みです。世界の他の地域からの供給は、前年同期と比較すると安定しており、2%の増加。ロシアが 10k toz(311kg)の増産。Q3比では2%の減少、これはジンバブエが10k toz(311kg)の減産になったため。

生産者在庫は35k toz(約1.1トン)の増加と見積もり。これは前年同期の40k toz(約1.24トン)よりもわずかに減少。Q4の鉱山生産からの供給は、1460k toz(約45.4トン)で、前年比としては7%の減少、Q3比では3%の減少となりました。


表:世界のプラチナ鉱山生産増減


表:2016年の世界のプラチナ生産


リサイクルからの回収による供給は、非常に弱かった昨年同期から28%(105k toz;約3.3トン)増加し、480k toz (約14.9トン)に。宝飾分野が75k toz(約2.3トン)、自動車触媒が30k toz(約0.93トン)。Q4の宝飾のリサイクルは180k toz(約5.6トン)と前年比71%の増加。これは中国と日本で昨年よりもはるかに多いリサイクルが出てきたため。昨年は中国では、そもそものプラチナ宝飾品の売り上げが伸びず、日本ではプラチナ価格の低迷から、リサイクルも盛り上がらなかった。一方、自動車触媒のリサイクルは300k toz(約9.3トン)と11%の増加。これは昨年よりも鉄くずの価格が上昇したことと、北米と西欧からのスクラップ量が増えたことが要因。

「需要」

Q4の需要は昨年同期比17%(310k toz;約9.6トン)増えて、2160k toz(約67.2トン)。主に地金やコイン、そしてETFへの投資が増加したことが要因。投資需要は315k toz(約9.8トン)増加し、産業用需要の20k toz(約620kg)の減少を取るに足らないものにしています。自動車触媒と宝飾需要は両方とも少しだけ改善。


表:四半期別プラチナ需要量


自動車触媒需要

自動車触媒需要は65k toz(約2トン)前期比で増加、前年同期比では1%の増加。

ディーゼル車の聖地でもある西欧でのシェアはQ4も下落が続いた。12月の自動車市場でのディーゼル車の販売は48.3%に落ち込み、前年比4.2%の減少となった。しかしながら西欧でのプラチナ需要は逆に上昇が続いており、5%増えて5期連続の増加となった。

インドは世界で二番目に重要なディーゼル車のマーケットである。そこでのディーゼル車の2016年の販売シェアは50%以上となった。小型車分野ではそのシェアを落としたが、SUVやMPVなど中大型者の分野ではほぼディーゼルの独壇場である。インドのQ4のプラチナ需要は昨年そしてQ3とも変わらず横ばい。

宝飾需要

プラチナ宝飾需要は前年同期比で1%、前期比で2%増加して680k toz(約21.1トン)。ただし、半期ベースで見ると2016年後期(H2)は前期(H1)より10%多く1345k toz(約41.8トン)であった。これでもまだ2015年H2の1470k toz(約45.7トン)よりも低い水準。

中国の宝飾需要は前年比6%(25k toz =777kg)減。上海黄金交易所(SGE)で宝飾業者が購入したプラチナの量は9%の減少、そしてSGEを介さないプラチナの輸入は2015Q4から50%の減少。しかし、同期の小売売り上げは4%の成長を記録している。中国の最大の宝飾業者であるChoe Tai FookはQ4には中国、香港、マカオでの売り上げは9%の減少になったと発表し、その原因は中国人観光客が4%減ったため。そして、大事な需要である結婚需要は14%もの減少となった。ただし、Q3よりは17%の改善となる。

しかし、中国での低調はインドの相場成長によってある程度カバーされている。インドの需要は一年で45%増加。これは男性の間でプラチナ宝飾が流行ってきていることや、結婚シーズンが迫っていたことがその要因。日本のプラチナ宝飾は昨年比5%の増加、Q3からは50%の増加。結婚式需要の増加と、より品位の高いPt 950への需要が高くなったことによる。

産業用需要

Q4の産業用需要は前年比で5%(20k toz=622kg)の減少。Q3との比較では8%(35k toz = 1.09トン)の減少で、405k toz(約12.6トン)。この結果Q4は2016年で最も弱い四半期になった。その原因は主に中国、そして、世界の他の地域でもガラス製造能力の拡大がゆっくりであったことに起因。ただし、部分的は石油化学分野の北米での伸びが相殺している。

投資需要

Q4の世界の投資需要は220k toz(約6.8トン)。地金とコインが110k toz(約3.4トン)、ETFが115k toz(約3.6トン)で、ETFとしては5四半期振りの増加となった。取引所の在庫は若干の減少。

日本の投資家のプラチナ地金の買いは2016年の最初の3四半期は減りつつあったが、Q4でプラチナ価格が下がったことから、Q4では再び需要が盛り上がり、コイン需要も刺激し110k tozとなった。

世界のプラチナETFはQ4で115k toz(約3.6トン)増えたが、これはその前の3期の減少の流れを反転させるものであった。最大の需要は英国の投資家で、76k toz(約2.36トン)、米国のETFは29k toz(約900kg)、スイスと南アのETF残高はほぼ変わらず。


(プラチナの投資需要)


「2017年の需給予想」

2017年供給予想は4%減少の7660k toz(約238トン)。需要予想は6%減少の7780k toz(約242トン)。需給バランスは120k toz(約3.73トン)の供給不足。過去5年の中では最も少ないバランスとなりそう。


(供給マイナス需要のバランス推移:2013~2017)


岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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