南アプラチナ鉱山の現状
先週のMetals Focusのウィークリーレポートが、「Survival of the fittest」というタイトルで、南アのプラチナ鉱山の状況を書いています。非常に参考になるので、今週はそれを紹介しましょう。
「Metals Focus Precious Metals Weekly」より「Survival of the fittest」(適者生存)
2011年、今から6年前、誰がプラチナ価格が2017年にほぼ半分になると予想しただろう?そしてそれよりもおそらく驚きなのは、世界のプラチナ生産が5%しか減少していないという事実だろう。
この状況を理解するために、まず世界のプラチナ生産の成り立ちを見てみる必要がある。南アは70%を生産し支配的立場にある。それに続くのがロシア(11%)、ジンバブエ(8%)、カナダ(5%)、そして米国(2%)、あとはその他である。ロシア、カナダ、そして米国での生産はほぼ副産物として生産されている。副産物とは、他のメタルの方がプラチナよりもその利益の大きな部分を占める鉱山である。それに対して南アとジンバブエでは、主にプラチナがメインの鉱山(つまりプラチナからの収入が最大であるもの)からの生産である。例えばアングロ・プラチナ社では、2016年の収入の57%がプラチナから上がっている。
この状況が分かっていると、なぜ、ロシア、カナダ、そして米国が2011年から4%だけ生産が減少し、それに対して南アが9%減少しているのかも理解しやすい。9%の減少も、価格が50%下がっていることを考えると、逆に驚異的な結果(減っていない!)ということが言えるだろう。2011年の南アでは、トータルキャッシュコスト(TCC)の平均は1264ドル、オールインコスト(AISC)の平均は1569ドルで、もし今日の価格で、他の条件が変わらないとするならば、南アのプラチナ鉱山の大半は損を出していることになる。
しかし、2011年から南アのプラチナ鉱山産業のコスト構造は大きく変化し、2016年にはトータルキャッシュコストは868ドルに、そして、オールインコストは975ドルに大きく下落している。この大きな変化の最大の要因は、南アランドの大きな価値の下落だ。1ドル7.26ランドから、14.7ランド(2011~16年の平均)まで、ほぼ半分までその価値を切り下げている。しかしオールインコストで計算すると2016年でもまだ業界の半分は赤字ということになる。
もし業界の半分が損をしているのであれば、論理的思考では、当然生産調整が必要であるし、そうなるべきである。しかし、ここは南アフリカ。南アの失業率は25%あり、大規模な失業に繋がるような政策を取ることは政治的に不可能であり、その上、鉱山は大規模で複雑なオペレーションをしており、それを閉山という形で止めることは本当に「最後の手段」であるのだ。
最もコストの高い南アの鉱山会社であるロンミンを南アのプラチナ鉱山業界の縮図としてみてみよう。彼らのメインの資産であるマリカナ鉱山(2016年の生産量は618koz(約19.2トン))であるが、この鉱山は11のシャフト(坑道)とオープンピット(露天掘り場)があり、このシャフトのうち4つは第2世代(Generation 2)とカテゴリー分けされ、この4つのシャフトから2017年は84%の鉱石が採掘されている。残りは第1世代のシャフトで、古く、コストもより高いものとなる。
そのため、ロンミンは利益を確保するためにこれら第2世代のシャフトにその生産を集中している。この結果、コストの高い地域のシャフト(ニューマンシャフト)は第1四半期に閉鎖されている。下のチャートで見ればよく分かるが、第2世代シャフトからの生産は確実に増加し、2013年の70%から、2017年第1四半期の84%と上昇している。可能な時は労働力は移転されているが、それでもなお6000人以上もの職がこれによって失われている。つい先日発表された最新の数字は、ネットキャッシュポジションが、第1四半期で1100万ドルと上々の結果となっている。