ゴールドコラム & 特集

中国のゴールド保有量

こんにちは。皆さん良い夏休みをお過ごしでしょうか。 今週はちょっと軽めに中国の中央銀行のゴールド準備についてです。 中国がそのゴールド準備高を発表し始めてからまだ2年ですが、その数字についての疑問の声には根強いものがあります。

中国の中央銀行である中国人民銀行(People’s Bank of China : PBOC)の公式の発表では2017年8月の時点で彼らのゴールド準備は1,843トンということですが、中国国内外のアナリストはこの数字は少なすぎるという見方が大勢です。

彼らの計算によるとPBOCの保有しているゴールドは現在4,000トンを超えていると見ています。これは米ドルの価値が下落する中での資産分散と国際金融市場での中国の信頼を増すという目的があると指摘しています。

もちろん中国人民銀行はそのようなことは一切発表していませんが、中国のゴールド生産量とその輸入量をベースに計算すると、中国の地上に存在するゴールドの在庫量は20,193トンになるとしている中国国内のアナリストもいるようです。

それによると16,193トンは一般市民が保有、残りの4,000トンを中央銀行が保有しているとのこと。この推測が正しいとすれば、中国はもはやドイツを追い越し、世界で米国(8,133トン)に次ぐ第2位のゴールド準備を誇っていることになります。

中国の投資家のゴールドを買うことへの熱意は、人民元への下げ圧力と地方大都市での地価の下落がまだまだ支えているとWorld Gold Councilはレポートしています。中国黄金協会(China Gold Association)の発表によると今年の前半は中国で売られたゴールドの量は158.4トンで、前年比51%の増加。

また国家としても、中国はその経済成長を背景に十分な米ドルを貯め込み、現在はその膨れ過ぎた米ドルを他の資産に換えてポートフォリオの分散化を試みています。ドルの価値の低下などのリスクを回避するという意味もあるのでしょう。2017年の前半で米ドルは9%もその価値を下げています。これは実は1985年以来の出来事です。


(ドルインデックスとゴールド)


この状況下において、ゴールドの準備を増やすことは、資産の目減りを防ぎ、また人民元下落の動きを和らげる効果も期待できるでしょう。そして、長期的には中国の世界金融市場における立場を補強し、人民元の国際化を加速させることにもなる、と地元のアナリストは見ています。

彼はある通貨が世界の貿易の決済で使われ、「価値」を安定して保存する手段として認められる、いわゆる「ハードカレンシー」と呼ばれるための条件は、その通貨の国の保有するゴールドの量で決まるとまで断言しています。

米ドルの世界経済への影響力の大きさの理由の一つは米国が世界で最大のゴールド準備を持っているからであり、中国人民銀行もIMFのSDR(Special Drawing Rights )における人民元の割合を高めようとしていることは明らかで、そのためにもゴールドの準備を積みましているはずである、というのがこのアナリストの考えです。

そして、同じような考えの元に中国のゴールドの準備高を計算したのが下のチャートです。少し古いものですが、2013年の段階(当時は中央銀行のゴールドの準備は1,054トンと発表されていました)で、実際の中央銀行は2,800トンくらい持っているはず、そして、中央銀行と一般市民の持っている量を合わせると5,470トンになると計算する人もいました。


(中国のゴールド準備は少なくとも発表された数字の2.5倍はあるはず)


その計算の根拠は中国国内のゴールド鉱山生産量とネットの輸入量、そして宝飾需要、工業需要、そしてその他の需要をそこから引いた数字を毎年の中央銀行のゴールド準備の増加分として計算しています。この考え方を用いると確かに一番最近発表された数字である。2017年8月7日の1,843トンという数字はやはり少な過ぎると感じますね。


岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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