インド中銀、新たな金輸入抑制策を導入
インド準備銀行(中央銀行)は7月22日、同国の経常赤字拡大の主因とされる金輸入を抑制するため、新たな施策を打ち出した。すなわち、同国の金輸入業者に対して、輸入した金の最低でも20%相当を輸出に振り向けることを義務付けたのである。
具体的には、金輸入量の20%以上を保税倉庫に保管して、それを宝飾品として再輸出することが義務付けられている。更に、業者が新たに金を輸入する際には、保税倉庫の75%相当を再輸出済みであることが求められる。
例えば金を1,000kg(1トン)輸入した場合、国内で販売できるのは800kg(80%)に留まり、残りの200kg(20%)は保税倉庫に保管した後に再輸出が義務付けられることになる。そして、保税倉庫からの輸出量が150kg(20%の75%)に達し、残りの在庫が50kg(20%の25%)に減少するまでは、新規の輸入が行えなくなることになる。すなわち、再輸出能力を有していない業者は、もはや金輸入が行えなくなるのだ。
保税倉庫での保管には輸入関税が留保されるため、価格面での再輸出が不可能という訳ではない。しかし、金輸入国が敢えてインドから調達する必然性は乏しく、従来よりも金輸入を行うためのハードルが高くなったことは間違いないだろう。
■価格規制から数量規制へ
インドの経常赤字は過去最高水準に達しており、2012会計年度(今年3月末まで)の場合だと、国内総生産(GDP)の4.8%に相当する880億ドル(約8兆8,300億円)にも達している。しかも、その最大要因は金輸入金額の拡大となっているため、インド政府・中央銀行にとって金輸入量を抑制するのは喫急の課題になっている。
その対抗策としては、今年に入ってから金輸入関税を従来の4%から6%、更に6%と引き上げることで、価格に敏感なインド消費者の金需要を抑制することを目指してきた。しかし、タイミング悪く金価格が急落したことで、こうした関税引き上げの効果が相殺されてしまっている。寧ろ、増税分を考慮に入れても金価格の割安感が強くなっているため、インドの金輸入量は拡大傾向を強めているのが実情である。インド中央銀行としては、もはや増税による輸出規制は困難と判断した模様であり、その結果が今回の価格規制から数量規制へのステージ切り上げになるのだろう。
■インドの金輸入量は30%減?
では、今回の規制によってインドの金需要にはどのような影響が想定されるのだろうか。
昨年のインドの金宝飾品輸出量は70トン程度に留まっており、ここから逆算すると輸入可能なのは350トン、国内供給量は280トンということになる。昨年の総輸入量は864トンであり、500トン(58%)近い輸入削減が求められることになる。
ただ、実際にはインド宝飾業界が輸出拡大に向けての動きを活発化させることで、そこまでの減少にはならないだろう。インドで4万社が加盟する宝石・宝飾品貿易協会は、30%の減少に留まるとの見通しを発表している。もっとも、この場合でも260トン前後の輸入削減を求められることになり、金需給に対するダメージは大きい。年間新産金が2,800トン前後の金需給において、これだけの需要構造の変化を吸収するのは容易なことではない。
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