過去最高のETF残高が押し上げるプラチナ価格
プラチナ価格が急伸している。NYプラチナ先物相場は、昨年12月から今年2月中旬にかけては1オンス=800ドル水準で上値の重い展開が続いていたが、2月下旬以降は段階的に価格水準を切り上げており、足元では900ドルの節目を窺う展開になっている。これは、昨年6月中旬以来となる約10カ月ぶりの高値更新になる。
プラチナ相場に関しては、これまで供給過剰環境を背景に上値の重い展開が続いていた。南アフリカのプラチナ鉱山業界団体ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の推計だと、2019年は総供給842万オンスに対して総需要は774万オンスに留まり、68万オンスもの供給過剰が発生する見通しになっている。
パラジウムやロジウム価格の高騰で鉱山生産が落ち込まない一方、脱ディーゼル車や新車市場の縮小で排ガス触媒用需要が伸びず、更には中国経済の減速で宝飾市場が縮小するなど、何重にもわたるネガティブ材料に直面している結果である。
この流れに修正を迫っているのが、プラチナ上場投資信託(ETF)に対する投資人気の高まりである。プラチナ価格が長期低迷する中、プラチナETFは購入した投資家が損切りを迫られる展開が繰り返されており、投資人気が急速に落ち込んでいた。しかし今年に入ってから、特に2月入りと前後して投資人気に火がついたのだ。昨年末の投資残高は202万9,592オンスだったが、それが1月末に210万1,094オンス、2月末に222万4,005オンス、3月末に248万5,578オンスとなり、今月はついに過去最高となる250万オンスを突破している。年初からの累計だと47万7,865オンスもの投資需要が創出されている。
プラチナETFは一般投資家には馴染みが薄いかもしれないが、投資家から集めた資金でプラチナ地金を購入するファンドであり、プラチナETFの投資残高増加は、投資用地金需要の増加に直結することになる。ペーパー投資である先物取引とは異なり、需給環境に変化をもたらす現物投資の一種になる。
このため、現在のペースでプラチナETF買いの動きが続くと現物投資需要が急増し、プラチナ市場における「2019年は供給過剰」という市場コンセンサスが否定され、場合によっては「2019年は予想外の供給不足」といった結果になりかねない状況になっている。
マーケットでは、先行して急伸したパラジム価格とパラジウムETFとの関係性を巡る経験から、プラチナ価格が上昇すれば、いずれプラチナETFは利益確定目的で売却されるといった見方が強い。しかし、昨年12月以降は既に4ヵ月連続でプラチナETFの投資残高は増加しており、4月もこの流れが踏襲されそうな状況になっている。
仮にプラチナETFを保有する投資家が十分な利益が得られたと判断して利益確定の売却に踏み切ると、プラチナETFは「需給の引き締め項目」から「需給の緩和項目」に一変することになる。プラチナETFは一種の地上在庫としての機能を果たすため、売却が行われると改めて需給バランスシートに組み込まれ、白金需給を供給超過の方向に傾けることになる。
ただ、なぜプラチナETFの投資人気に火がついているのか明確な理由が分からないだけに、予想外の供給過剰化の回避、更には供給不足化のリスクが、プラチナ価格を大きく押し上げている。金価格やパラジウム価格に対する割安感が評価されている可能性が高いと考えているが、プラチナの主産国である南アフリカの電力供給不安といった鉱山生産のリスクを指摘する向きもある。いずれにしてもプラチナETFの投資人気がいつまで続くのかが、プラチナ価格が長期上昇トレンドに発展するのか、一時的な反発に留まるのかの鍵を握ることになる。
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