金銀比価が7年ぶりの高値(ゴールド高・シルバー安)のレベルに
シルバーのパフォーマンスが良くありません。特に先月8月はゴールドが2.7%上昇し1118ドルになったのに対してシルバーは逆に0.3%下げ、14.51となりました。シルバーは6年ぶりの安値に沈んでいます。金銀比価(Gold & Silver Ratio)は一時1:80まで上昇し、2008年11月のリーマン危機でゴールドが大きく上昇したときにつけて以来のレベルになりました。
これはゴールドには世界株価急落から来るsafe haven的な買いがあるのに対して、シルバーにはそれがなく、逆に工業用メタルとして、株価の下げは景気の減退、製品の需要の減少いう想像から株価とともに売られる傾向があったからです。このところ、過去数ヶ月は需要が上向きだっただけに、8月の低調ぶりは正直心配であると貴金属調査会社Metals Focusは言っています。
世界の2大シルバー需要国である米国とインドのここまでのデータを見れば、シルバーの需要は好調であることが分かります。米国では8月のイーグル銀貨の売上は4.9 million oz(=約15トン)であり、年初からの累計は32mio oz(約100トン)に達しています。7月からはシルバーの供給不足で、販売を抑制しているにもかかわらず、この数字は前年比14%の伸びです。
インドでは、直近のデータによればシルバーの個人投資は非常に活発で、8月のシルバー輸入量は900トンに達しました。これは今年二番目の量であり、今年のこれまでの輸入量の合計は4900トンになり、これは前年同時期のほぼ50%増加となっています。Metal Focusは今年のインドでのシルバーの需要は驚くべきものになるだろうと予想しています。
これだけの需要の伸びがあればシルバーの価格は上昇しておかしくないはずです。しかしながら、ここ数ヶ月のゴールドと比較したシルバーのパフォーマンスはまさにがっかりといえるものです。8月最終週にはシルバーはほんの一瞬ですが14ドルを割り込みました。これは2009年以来レベルです。となるとここまでの米国とインドの強い需要が、今年後半これからも続くかどうかはシルバーにとっては非常に重要な要素となります。そしてもし両国がこれまでのペースと同じペースでシルバーを買い続けたとしても、それが投資家の買いを呼ぶかどうかというのはわかりません。
シルバーのパフォーマンスが良くないのは、リスクが大きい(ボラティリティが高い)ことと、産業用需要に頼る部分が高いことが原因だと思われます。コモディティーに対する投資家の信頼が崩れ、中国をメインとする主要なマーケットの失速がシルバーに重たくのしかかっているのが現状です。まだしばらくはこの産業用メタルに対する消極的な投資家の態度は変わらず、強い買いはマーケットに入ってきそうにありません。シルバーの我慢の時が続きそうです。