ロシア中央銀行の動き
World Gold Council (WGC)によれば、現在、地上にあるゴールドが183,600トン。そのうちの16.8%に当たる30,900トンを中央銀行が保有しています。
今週はこの中央銀行のゴールドに対する最近の動きを見てみましょう。下のチャートはWorld Gold Councilによるものですが、近年に目立った動きをしている世界の中央銀行、ロシア(紫)、トルコ(赤)、メキシコ(青)、中国(緑)、インド(黄色)のゴールドの保有量の変化を2000年から表したものです。中国の近年の伸びが激しいように見えますが、これは彼らの発表をベースにしているのでこういう形になっています。つまり中国は2008年と2015年に金保有量を発表し、2015年6月からは毎月発表するようになりました。そのためそれ以前の中国の保有金の増加は、グラフのようにある日突然買ったわけではなく、その発表までの何年か掛けて積み上げてきたものです。それが毎月発表するようになり、コンスタントに彼らが買っているのが分かるようになりました。
この国々の中でも最も注目すべきはロシアです。昨年もっとも多くのゴールドを買った中央銀行はロシア中央銀行です。2015年は208.4トンのゴールドを購入し、ロシア中央銀行のゴールド保有高は1415トンとなり、1年で17%の増加となりました。これによりロシアの外貨準備におけるゴールドの占める割合は11.96%から13.18%に上昇しました。2016年1月には21.8トンものゴールドを買い、これは昨年11月と同じレベル。ちなみに10月には18.66トン、9月には34.2トンと、2007年から着実にゴールドの保有量を増やしています。上のチャートを見ても分かるようにほぼ毎月着実に10トン以上のゴールドを買い続けています。
ロシアはここ2年間ルーブル安に襲われています。ルーブルの価値は2014年の年初の1ドル33ルーブルから、2016年1月末には85ルーブルまで下落し、その価値は2.5分の1にまで減少しました。
原油の最大の輸出国であり、原油安がロシア経済に打撃を与え、ルーブルの価値は大きく下げました。ロシアに対する信用不安を一掃、というわけにもいきませんが、ある程度ルーブルに信用を持たせるためにも、より多くのゴールド準備が必要という切羽詰った状態にありました。しかし、今年に入り、原油が戻し、ゴールドも急上昇したことによって、ロシアの「ゴールドヘッジ」策は見事にその役割を果たしたと言っていいでしょう。まるでこういう自体が来るのが分かっていたかのように、ずっとゴールドを買い続けていたロシア、プーチン政権はさすがだとしか言い様がありません。もしゴールドのロング積み上げがなければ、ロシアルーブルはもっと壊滅的な状態になり、ひいてはロシア経済もどうなっていたかわからないような危機に瀕していたでしょう。最終的にはもちろん原油の価格の影響が最も大きいはずですが、少なくともゴールドはその危機をヘッジするのにその役割を十分に果たしたと言えるでしょう。まさにこれがゴールドの役割。個人の財産だけでなく国の経済をも救うものであると言えるのではないでしょうか。