【伊藤博文が名付け親】東洋と西洋の文化が融合した長楽館・黄金の「御成の間」
日本初の紙巻きタバコ「サンライス」の大ヒットにより財をなし、”明治の煙草王”と呼ばれた実業家・村井吉兵衛により、国内外の賓客をもてなすための迎賓館として明治42(1909)年に建築された「長楽館」。祇園・円山公園に佇み、ルネサンス様式の外観を持つこの洋館は現在、建物全体が京都市の有形文化財となっています。
場所はこちら。八坂神社の東側、祇園からねねの道を通り、円山公園入り口の左にあります。何度もこのあたりには行ってはいたのですが、実のところ私も最近までこの存在を知らず(門扉のイメージだけあった)、今回の取材させて頂いたことで、「春は桜、秋は紅葉と京都の四季を一望できる場所」として村井吉兵衛が京都で一番の場所にこの迎賓館を建てたという意味がよくわかりました。
こちらが長楽館の門扉と外観。設計は京都聖ヨハネ教会をはじめ今も残る数々の建築を手がけた宣教師であり、建築家のアメリカ人、ジェームズ・ガーディナー。冒頭でも書いた様に外観はルネサンス様式ですが、内部は英国、フランス、中国、アメリカ、イスラムなどの様式が巧みに採用され、古都京都の眺望を取り入れながら、類まれなセンスに溢れた和洋折衷の美の空間となっています。
迎賓館として利用され、皇族の方々をはじめ、米財閥ロックフェラーなど国賓や賓客をもてなしてきた「長楽館」。なかでも明治の大物政治家・伊藤博文が滞在した際に、御成の間の窓から東山を眺め「長く楽しみが続くように」と名付けたのが「長楽館」の由来となったとのこと。館内には伊藤博文が揮毫(きごう)した額も残っています。
館内に足を一歩踏み入れれば、ネオクラシック様式の食堂、ロココ様式の応接間、中国伝統の模様の壁、イスラム様式のタイルの床、そして書院造りの和室など、芸術様式の宝庫となっています。
西洋建築である1・2階は、現在レストラン(旧応接間)、喫茶(旧煙草の間)、ブティック(旧サンルーム)となっており、この優雅なフォルムの美しい階段より上は通常非公開エリアで、純和風の書院造りの和室と煌めく黄金ゾーンが広がります。
こちらは中2階にある茶室「長楽庵」。表千家にある書院形式の「残月亭」を模して造られたと伝えられています。洋館の外観で見えていた左右の桜と紅葉のステンドグラス、内部は実は和室であり、和と洋の融合が絶妙な構成となっています。
そして茶室から更に上に昇ると、日本建築のなかでも最も格式のある書院造の和室「御成の間」が。こちらは三階・御成の間から見た階段の吹き抜け部分ですが、左側の部屋には階段に張り出した欄干などもあったりします。
こちらが黄金に煌めく「御成の間」。天井には、村井家の家紋の三つ柏があしらわれ、違い棚や華頭窓がその格式の高さを表しています。
「御成の間」の見所の1つである折上格天井天井。金具には村井家の家紋三つ柏が施され、バカラ社製シャンデリアも使われています。また、神坂雪佳作といわれる襖絵の金箔・銀箔など、東洋と西洋の文化が融合した豪華絢爛な空間になっています。
最後に、長楽館を訪れた際にぜひ見ていただきたいディテールや小物、風景を。
こちらは長楽館を建てた煙草王・村井吉兵衛にちなんだ、オリジナルペーパーコースターで、当時の村井煙草のパッケージをそのままコースターに。日本初の両切り紙巻煙草「SUNRISE(サンライス)」や大ヒット銘柄「HERO(ヒーロー)」、美しい孔雀の描かれた「PEACOCK(ピーコック)」のスタイリッシュなデザイン。
こちらは床のタイル。左は1階「長楽館ブティック(旧サンルーム)」で、右は2階「喫茶(旧煙草の間)」のもの。イスラミックな感じもあったりと可愛いです。
最後に眺望。長楽館からは東山や比叡山といった山並のほか、知恩院、平安神宮など京都名所を一望できます。隣接する円山公園の桜や紅葉を見渡せるだけでなく清水寺、高台寺、知恩院といった京の名所にも散策をかねて訪ねられる特別な場所にある長楽館、ぜひ一度訪れてみてください。
▼長楽館公式サイト
- 撮影者:GOLDNEWS
- 場所:京都・長楽館