ゴールドコラム & 特集

Vol.1-名画『接吻』に秘められた家族の絆

■クリムトの黄金時代


グスタフ・クリムト『接吻』

グスタフ・クリムト『接吻』 (1907-1908 オーストリア・ギャラリー所蔵) (c) Bridgeman/PPS

まばゆいばかりの黄金の輝きに包まれながら抱きしめあう二人。女性の恍惚とした表情は、いまそこにある愛の輝きを一人占めしているかのようです。官能的な男女の姿を描いた『接吻』は、19世紀後半のウィーンが生んだ画家、グスタフ・クリムトの代表作です。モデルとなっているのは、クリムト本人とその恋人であるエミリエ・フレーゲ。彼女とは結婚はしなかったものの終生パートナーとして人生をともにしています。『接吻』は、1908年にウィーンで開催された展覧会に出るや大きな反響を呼び、オーストリア政府が買い取るほどプレミアのつく作品となりました。

 この作品が見る人々に強いインパクトを与えるのは何と言ってもキャンバスを埋め尽くしている絢爛たる金。二人の衣装から背景に至るまで、まるで金のモザイク画を見ているようです。実際、『接吻』をはじめ、『ダナエ』『アッター湖の島』など、クリムトの黄金時代の作品にはいずれも金が惜し気もなく使用されているのです。

■クリムトと金との出会い


きらびやかな金細工、金箔の質感は作品全体に荘厳さと温かさを醸し出していく。

では、なぜクリムトが多くの作品に金を使うようになったのでしょうか。クリムトと金には実はいくつかの深いつながりがあります。その一つがクリムトの父の職業が金などを扱う彫版師だったことです。クリムトにとって金の輝きは幼い頃からごく自然のものだったといえるでしょう。また、二人の弟エルンストとゲオルクがそれぞれ金細工師と彫刻師になったことも強い味方になりました。クリムトの作品を飾る額縁の設計に携わるなどして応援してくれたからです。こうした弟たちの助けもあってか、クリムトが工芸学校を卒業後に設立した劇場の壁画などの装飾を仕事とする工房「芸術カンパニー」の経営はすぐに軌道に乗りました。ウィーンのブルク劇場の装飾による功績では金功労十字賞を受賞。ついには壁画装飾家として大きな成功を収めるまでに至ります。

壁画装飾といえば、その神秘的な世界を表現するのにやはり金は欠かせないものです。クリムトにとって金とは、家族と歩んだ歴史の象徴だったのかもしれません。

■永遠の輝きを保つ金細工


黄金の輝きとともに、精緻で豊かな色彩感覚はクリムトの魅力をさらに際立たせている。

そんな家族との歴史は『接吻』の作品の中にも秘かに息づいています。抱き合う男女を彩る美しい金。その細部をよく見てみると、父から子へと受け継がれた、高度な金細工の技を施した金箔が多用されているのがわかります。ひざまずいて身を委ねる女性の背景から聖なる空間さえ感じられるのはまさに金細工を施した賜物。クリムトは抱き合う二人の世界を象徴的なものにするためにあえて金を使ったのでしょう。  

クリムトが選択した特別な輝きを持つ金。それは、人々の目を楽しませる豪華な色彩を保つとともに、神聖な光あふれる空間を創造してくれます。黄金のもつ絢爛なイメージと装飾技法でこれまでに多くの人々を魅了したクリムト。その存在は、百年を過ぎたいまでも華やかな輝きを放っています。永遠に輝き続ける金という魅惑に彩られた『接吻』。そこには、家族の深い絆が潜んでいたのです。


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SGC信州ゴールデンキャッスルは純金製品日本一の在庫量を誇ります。金製品や美術品の販売に加え、金製品に関しては全国有名百貨店を中心に大黄金展を開催。また東京・銀座に金製品の買い取り・販売専門店「銀座SGC」を展開。

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