ゴールドコラム & 特集

Vol.16-そろそろ、まんじゅう?

さまざまな分野で業界用語ってありますよね。
箔の業界にもありますよ。ま、10年以上もこの業界にいるワタクシですからね。知らない言葉なんて…ええ、ありますとも。大アリです。職人さんの仕事場には未知との遭遇がいっぱい!

「おっ、そろそろまんじゅうか!」
ある日、紙仕込みをしている職人Aさんに職人Bさんが言いました。
何で「まんじゅう」? 微妙な表情をしていると職人さんが
「のりくちまんじゅう、知らんが?(知らないの?)」
ノリノリでイケるクチのまんじゅう? お酒は嗜む程度でそんなにイケる方じゃないけど甘いものならノリノリで…ってオイ! と自分で突っ込っこんでみたものの、やっぱりわからん…
教えて、職人さ?ん。


箔打ち紙の原紙。奥の束を広げ、6分割したのが手前の束。この束の厚みが、紙仕込みをすると半分以下に。びっくり!


小間打ち紙。上澄(厚さ約1千分の1mm)を挟んで打つ時の紙。見た目はほぼ同じですが、これは「まま紙」ではありません。


箔打ち紙(まま紙)と箔。小間紙で打ったものをこの紙に挟み入れて打ち、1万分の1mmの箔に。初めて箔を打てるようになった時がその紙の「のりくち」。


のりくちまんじゅう。それは、めでたい場面で登場します。
金箔打ち紙がようやく金箔を打てる紙に育ったその状態を「のりくち」といいます。
「のりくち」になったということは、これから金箔を打って稼げる紙に成長したということです。箔打ち紙を「まま紙」(まま=飯)というのもわかります。
箔打ち紙の原紙は数十万円もする高価な和紙。それを手塩にかけて仕込んでいくわけです。「のりくち」は人間でいうところの成人式のようなものではないでしょうか。
時には厳しく(?)打ち、時にはやさしく。愛情をたっぷり注いで育て上げたのですから、わが子も同然、喜びもひとしお。祝わずにおれましょうか。かあちゃん、酒持って来―い!
なんて展開もあったかもしれませんが、職人仲間やお世話になっている人にまんじゅうをふるまったそうです。これが「のりくちまんじゅう」。
職人は一生に何本も仕込みますから、紙が育つそのたびに配るということになります。

まんじゅうに限らず、実際は赤飯だったり、夏場ならアイスキャンディだったりと様々だとか。仰々しいものではなく「おかげさまで」と、ほんの気持ちで配る感覚だそうです。成人式にも「おかげさまで一人前になりました」と内祝いのまんじゅうを配リますものね。

まんじゅうというキーワードに食いついたことがきっかけでしたが、箔打ち紙を大切に扱う職人さんの深い想いを改めて知らされたエピソードでした。

ところでAさん、おまんじゅうはいつ?
「昔は大きな工場に集まって仕事をするのが普通だったから、仲間にふるまったけど… 今でもそういう人はいるんかねぇ。」

なあんだ、がっかり… この風習も伝統の技と一緒に残していただけませんかね、職人さん。


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プロフィール

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HAKUZA

世界に誇る伝統の技を残し、世界遺産となった中尊寺金色堂など重要文化財の金箔を手がける。2002年、「純金プラチナ箔」(特許取得)を開発。箔本来の力と美しさを「箔品」として表現し、「箔座本店」をはじめとする石川県金沢市の直営店のほか、東京日本橋で旗艦店「箔座日本橋」を展開。

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