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株価だけではなかった、中国で金属相場も急落

中国でコモディティ市況が急落している。上海株価指数が6月12日の高値から3割を超える急落になるなど、中国政府の相次ぐ株価対策でも株安に歯止めが掛からない中、世界最大の工業用素材消費国である中国向けのコモディティ需要が鈍化するとの懸念が広がっている結果である。

上海期貨交易所の価格水準(7月8日時点)を昨年末と比較すると、銅-13.8%、亜鉛-11.6%、ニッケル-10.3%、鉄筋-25.9%、天然ゴム-8.7%などとなっており、株式市場のみならずコモディティ市場からも投機マネーが一斉に流出していることが確認できる。特に、ギリシャ債務問題が混迷の度合を強めた今週に入ってからは、1営業日で5%近い急落相場を形成するような動きも目立つようになっている。中国・青島港に荷揚げされる鉄鉱石価格も、今年4月に続いて1トン=50ドルの節目を割り込んでおり、過去1年で約半値水準まで急落している。

もともと、中国では資源輸入量の鈍化とコモディティ価格の低迷が報告されていた。例えば、1?5月期で銅の輸入量は前年同期比-12.5%、鉄鋼製品は-10.3%、鉄鉱石は-1.1%など、成長ペースの鈍化にあわせて資源調達量も抑制する傾向が目立っていた。中国政府は今年7%前後の成長目標を掲げているが、従来のように二桁の経済成長を遂げていた時代と比較すると、資源調達は明らかに抑制的になっており、資源価格の低迷にもかかわらず在庫調整を優先するような動きも目立っていた。

それでも足元の経済指標が一定の底堅さを見せる中、5月にかけては昨年末の価格水準を回復する場面もみられるなど、大きな値崩れは回避してきた。政策金利の引き下げといった金融政策からの支援もあり、中国経済に対する信認が辛うじて維持されていたことが、コモディティ市況をサポートしていた。しかし中国株がこれまでのレバレッジを効かせた急騰地合から一点して急落相場に転じる中、実体経済(=資源需要)への影響を見極めたいと考えている向きが増えていることが、一斉にコモディティ市場からの資金引き揚げを促している。

世界的にみても、ドル高(ユーロ安)でドル建て商品価格が値下がりし易くなっていることもあり、CTA(商品投資顧問業者)やマクロ系ヘッジファンドがコモディティ市況に対して弱気スタンスに傾斜している。買いポジションの手仕舞いのみならず、新規で売り込むような動きも見受けられ、コモディティ市況には強力な下押しプレッシャーが発生している。

ギリシャ債務問題に関しては、仮にギリシャがユーロ離脱を迫られるような事態になったとしても、コモディティ価格に対する影響は限定的とみられていた。しかし、中国の資源需要動向はコモディティ市況のトレンドを決定付けるだけのインパクトを有しているだけに、中国市場の「異変」が実体経済にも影響を及ぼすかもしれないとの懸念が、杞憂か否かを見極めたいとの消極姿勢が広がっている。

もともと、中国の株価急伸は持続可能性のあるスピードではなく、多くの市場関係者がいずれは調整が始まることを確実視していた。しかし、中国政府が場当たり的な株価対策を打ち出し、それでも投資家の信頼感を回復できない中、市場からの距離を置くことを選択する投資家が増えている。



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プロフィール

小菅 努

Tsutomu Kosuge

マーケットエッジ株式会社 代表取締役

1976年千葉県生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。

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