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ロシアのゴールド保有高1505トンに

ロシア中銀は先週、同国のゴールド保有高が約1505トンになったと発表しました。7月には約6.2トン増加しています。今年のここまでのロシアのゴールドの買いは90トン以上になりました。過去2年以上、ロシア中央銀行は世界で最もゴールドを買っている中央銀行になっています。ちなみに第二位は中国です。


(ロシアのゴールド保有残高の推移過去5年間:単位million ounce)


昨年2015年はロシア中央銀行は記録的な208トンものゴールドを購入しました。昨年は、国際社会のロシアに対する経済制裁と原油価格の急落により、ルーブルが大暴落、インフレ率は二桁に上昇し、ロシアは未曾有の金融危機に陥りました。世界銀行によると、原油はロシアの圧倒的に最大の輸出品であり、ロシアのGDPの15~20%を占め、政府の歳入の大部分なのです。2016年はロシアにとっては良い形で始まりました。原油そしてゴールドは大きく上昇、それによりロシアは助けられ、金融危機から免れることができたのです。ロシアの外貨準備は1月には3710億ドルであったのが、7月末には3930億ドルまで増加しました。

ロシアのゴールド購入のペースは2015年に比べると2016年はいくぶん控え目になっています。今年7月までの買いは90トンですが、昨年同時期は約80トンでした。しかし2015年は1月と2月は全く購入せずで、3月から7月までのペースは、2015年は1ヶ月あたり約16トン、2016年は約12トンと減少しています。5月の購入量がロシアは3トンのみで2年来の少ない数字で、中国も5月は全く購入せず。これは今年5月にゴールドが反落したひとつの要因と思われますが、あまりに急ピッチであったゴールド価格の上昇に、ロシア・中国ともゴールドの買いをやめたのではないかともマーケットでは噂されました。


(ドル建てゴールド1年 – 5月の反落場面)


しかし翌月6月には中国は15トン購入。7月は5トンでした。

ロシアの外貨準備高は今年7月末の時点で3930億ドルまで増えていますが、これを数年以内に5000億ドルまで増やすということを明らかにしています。2016年7月31日現在で、ロシアの外貨準備におけるゴールドの割合は約12%。3940億ドルのうち、510億ドルがゴールドの価値ということです。ロシアはアメリカとは対立していますが、その外貨準備高の中心になっているの米国債です。

ロシア中央銀行のゴールドの購入量は現在圧倒的に世界一です。昨年の8月から今年2016年7月までのゴールド購入量は中国が150トンであったのに対して、ロシアは220トンと46%も多いものです。この結果ロシアのゴールド保有量は1505トンに達しました。下の表は2015年年末のもので、ロシアは1415トンになっていますが、それからほぼ100トン増加しており、現在は世界で第6位のゴールド保有国になっています。



ロシアのこのゴールドを増やす政策は、ゴールドが一年(上昇は2016年に入ってからですが)でほぼ30%も価値が上昇したことで大成功ということができます。ロシアのゴールド鉱山生産は世界第三位の生産量であり、安くなったルーブルを国内で生産されたゴールドに置き換えて行ったことによって、外貨準備の価値を上げたということができます。ロシア中銀は効果的にルーブルをゴールドに交換したと言えます。これはルーブル下落がロシア経済と国家の信用に与えた悪い影響を少なくとも軽減することに寄与したといえます。持つべきものはゴールド、ロシアはそれを地で行っています。



岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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