高頻度取引(HFT)をめぐるセンセーショナルな報道について
高頻度取引が再びニュースで取り上げられています。ここで、ブリオンボールトの米国市場開発責任者のミゲル・ペレスーサンタイアがその解説をしています。
今回のニュースのきっかけは、新たな事実が明らかとなったからではなく、経済著書の作家Michael Lewis氏の広報担当チームが彼の新著「Flash Boys」の宣伝のために、米著名テレビ番組CBSニュースの「60 Minutes」への出演を可能としたためなのです。
それでは、高頻度取引とはどのようなものなのでしょうか?学問分野においては、多くの研究は行われていません。高頻度取引が、2010年5月の急落の要因と非難されて4年が経ちます。政府は2012年以来、この取引を定義することに苦心しています。高頻度取引は、あるビジネスモデル全体を表現する方法です。高頻度取引を行うのは、通常ヘッジファンドであり、富裕層の資産を運用している企業です。彼らは、高性能のコンピューターと博士号を持つ数学者(金融業界では「Quants」と呼ばれる)を駆使してこのような取引を行います。数学上の高い知力を持つこれらの人々は、最も高性能のコンピューター上での取引プログラムを作り上げます。
その目的は何でしょうか?それは、市場での取引リスクを最小限にし、様々な規模の取引を一定期に行い、できる限り早く収益を上げた上で取引を終了することです。
私は、日曜日の夜に放送されたこの番組を見ませんでした。しかし、月曜日にニューヨークオフィスへ向かう途中の車の中で聞いていたラジオ番組で、多くの人々がコメントをしていました。そして、数日後には高頻度取引を行う業界を擁護するムードが高まったのでした。これは、私も思いもよらないものでした。Lewis氏の新著においてはこの陰謀説が語られており、これをウォール・ストリート(金融業界)に反する人々は喜んでいるのです。
高頻度取引が市場に与える良い影響、そして悪い影響に関する書物はすでに多く発行されています。センセーショナルな説は新しいものではありません。しかし、悪影響と考えられる大部分は、その結果であり、その目的ではありません。それは、これらのブログラミングによってどのような反応が起こるかは、完璧に予測できていないためなのです。
これは、考えられないことかもしれませんが、作り上げた新しい技術に適応すべく人々は苦心しているのです。そして、今後もその過程で問題が出る可能性もあり、市場に悪影響を与えるかもしれません。しかし、私はこの新たな技術は、多くの場合一般の人々にとっては利益のあるものだと信じています。
私達は、悪名高い「急落の数々(Flash Crashes)」を思い起こします。最も有名なのは、2010年5月6日木曜日の「Fat Finger(指の太さ:操作ミス)」ケースでしょう。この日に、株式市場は5分間に600ポイント急落しました。それは、コンピューター上の欠陥と考えられました。しかし、これは、売り注文のプレッシャーが、「Algo」取引プログラムが取引を終了させるきっかけとなったためと見られます。これらの自動取引は、高頻度取引とも呼ばれていることも、混乱のひとつとなっているのですが、この自動取引とは、ある一定の価格で市場に出されている取引を終了させるものであるために、市場の流動性を急激に失わさせる原因となっているのです。
このような、5分間の大惨事は、規制当局にとっては最も懸念するべきことなのでしょう。しかし、今回のニュースとなっている高頻度取引とは、本来個人投資家を含む投資家にとっては有益なものへの非難なのです。
高頻度取引の業界がもたらす大量の取引とそれによる流動性は、10年前と比較しても、取引費用を最小限に引き下げるものであり、最も重要なプラス要因の1つです。
高頻度取引は、多くの人々(特にLewis氏)によって「Front Running(最初に取引される)」の注文と思われています。「Front Running」とは、ストックブローカーが顧客の注文を受けながらも、自社の口座を優先することを意味します。ストックブローカーの義務は、顧客に仕えることです。そのため、これはもちろん違法です。顧客の注文を成約する前に価格を上げることは、顧客に損害を与えることで、利益を得ていることになります。
今日の「Front Running」は、高頻度取引業界であると主張しています。これはこの業界が費用を支払うことで、価格にいち早くアクセスでき、より高性能の「Colocation(地理的に市場により近い)」コンピューターで、市場にいち早く入ることができる(注文が出せる)というものです。「Colocation(地理的に市場により近い)」とは、自社のコンピューターを市場に近い場所に設置しているということです。これは、通常その市場によって提供されている、有料のサービスです。そのために、不公平に有利な立場を得ていると思われているのです。
Michael Lewis氏は、この「Colocation(地理的に市場により近い)」ことが、高頻度取引オペレーターが、投資家から利益を少しずつ取り上げ、一日に多くの収益を上げていると主張しています。また、顧客の注文よりも前に注文を出し、それと同様の注文を出し直しているとも主張しています。しかし、これは本来取引を活発化させているものなのです。
例えば、もしあなたが、ペパーミントのお菓子を購入するために、道の向こうのキャンディーのお店へ行くとしましょう。その時に、私があなたがこの店に行くことをエレベーターの中で聞いたことで、この店へ先へ行き、たったひとつ残っていたそのお菓子を1ドルで購入したとします。そして、それを1ドル10セントであなたに売ったとします。
これが、違法な「Front Running」なのでしょうか。高頻度取引は、流動性を供給していると理解されています。そして、この取引活動によって、個人投資家も利益を得る事ができる、実際の売買スプレッドは狭まることとなります。
私は、この議論における両サイドの専門家を知っています。そのため、古い業界の人々が、新しい技法に対して批判的であることに驚いていません。両者は、それぞれ理解できる言い分を持っています。しかし、これはセンセーショナルに騒ぎ立てるべきものではありません。それよりも、高頻度取引は、偏見の目で見ること無く、十分に研究され、この取引の特性とそれがもたらす影響に理解を深めた上で、基準を設定すべきものなのです。
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Miguel Perez-Santallaは、世界最大のオンライン金現物投資サービスを提供するブリオンボールトの米国市場開発責任者である。個人投資家の代弁者であり、メディアのコメンティターやセミナーのスピーカーとしても活躍。現職に至る前に、米国の主要コインディーラーや国際的規模の精錬会社、Heraeusで勤め、貴金属業界に30年以上従事した経験を持つ。