ロンドンにおける2017年からの新たな金取引の届け出について
ロンドン貴金属市場協会の会員のロコ・ロンドン取引の規模が、新たなシステムの導入で明らかになるようです。
世界の貴金属取引の中心であるロンドンにおける金取引の規模が、ロンドン貴金属市場協会が昨日発表した、2017年から始まる協会の会員に課される新たな届出システムで明らかになるようです。
ロンドンの貴金属取引は、未だに「店頭取引(Over the counter:OTC)」で行われています。これは、それぞれの取引の買い手と売り手が、取引所を介するのとは異なり、直接取引を行います。
現在は、ロンドン貴金属市場協会の主要メンバーのみが、その取引の詳細を届け出ています。ロコ・ロンドンの取引規模は、過去12ヶ月において、これらの主要メンバーの日々の平均的な決済額の225億ドル(約2兆6000万円)の3倍から9倍の規模と予想されています。
「金取引の実際の取引規模や流動性を証明するのは、市場にとっては大きな問題でありました。」とロンドン貴金属市場協会の顧問弁護士のSakhila Mirza氏は昨日の記者会見でコメントしています。
最新の金融業界の規制であるバーゼルIIIでは、2014年から自己資本規制の強化のために金融機関が保有しなければならない所要安定調達額(RSF)としての金の価値は85%ヘアカット(削減)されています。
そのために、大規模な市場参加者はこれに見合う資本を確保するための費用が増加し、金の所有を増加させるのを避けるようになっていました。
それは、バーゼル銀行監督委員会は、金が「高い流動性を持つ資産」である条件を満たさないとし、2011年の調査で他のコモディティと同列と見なしたことからでした。この調査は、金業界のマーケティング団体であるワールド・ゴールド・カウンシルの、古くは2009年からバーゼル委員会に行なったロビー活動の結果行われ、ロンドン貴金属市場協会の会員の3分の2と全てのマーケットメーカーが、平均的な1日のロコ・ロンドンの金の取引規模は2400億ドル(約24兆7400万円)と答えたにもかかわらずでした。
これは、2011年の第1四半期の決済額の9倍となります。そして、米国の市場で取引されるコメックスの金の先物取引の10倍の規模であり、国際決済銀行のデータによると世界の最も流動性の高い4つの通貨ペアを除く全ての通貨ペアの取引増額を上回る規模となります。
2011年第1四半期の調査で回答された取引の90%以上が2営業日後に決済されるスポット取引でした。その残りは、現物貴金属のデリバリーが行われるフォワード取引、もしくは将来デリバリーの権利を持つオプション取引でした。
ロンドンのフォワード市場の透明性は、一般に認知される「フォワードカーブ」となるでしょうと、ロンドン貴金属市場協会の最高執行責任者のRuth Crowell氏は、火曜日の会見で述べていました。これは、2014年以降LIBORの不正操作事件で政治的圧力もあり、市場参加者が規制当局の監督下にない指標を利用できなくなっていたものの、再び「フォワードカーブ」を市場参加者がそれぞれのポジションを評価・判断するツールとして利用することができるようになるであろうということです。
そして、「スポット取引の届け出の内容は、英国や世界の規制当局の派生商品取引の規制を超えたものとなるでしょう。これは、この市場の透明性を高めることへの決意を示しています。」とロンドン貴金属市場協会のMirza氏は述べています。
ロンドンで決済されるために取引される銀とプラチナとパラジウムについても、新たなシステムで届け出が行われることになります。このシステムは、市場の透明性を高め、より良い市場へと高めるための今年の戦略の一つとして、ロンドン貴金属市場協会によって率いられ、フィンテック企業のBoat社(取引市場を提供するCinnober社の傘下)によって提供されます。
ロンドン貴金属市場協会の会員のシステム導入費用には上限が設定されていると、Boat社のCEOのJamie Khursid氏は述べ、その理由の一つとして、既に13のマーケットメーカー企業の3分の2の金融機関を含む40社と既にデータ接続がされているためと説明していました。
ロンドン貴金属市場協会の最高執行責任者のRuth Crowell氏は、Boat社を選択肢たことに対し、「フィンテック企業と既存の取引場の選択肢があった。しかし、フィンテック企業の方が、現段階でどのように決済関連の方法などが決まっていない中、より柔軟に対応できるだろうと考えた。」と答えています。
ベースメタル專門のロンドン金属取引所は、2017年にロンドンの金のコントラクトをローンチする計画を持っています。これは、ワールド・ゴールド・カウンシルと、ロンドン貴金属市場協会のマーケットメーカーで決済を提供しているICBCスタンダードバンクを含む6社がサポートをしています。
Mirza氏は、ロンドン貴金属市場協会の新たなシステムは、この計画に競合するものではないとも答えていました。
ブリオンボールト社のリサーチ部門は、オンライン金取引所有サービスを提供する世界有数の英国企業ブリオンボールトの、リサーチ主任エィドリアン・アッシュ、研究員ベン・テイラー、日本市場担当ホワイトハウス佐藤敦子を含む国際市場担当者によって構成されています。