賢い投資家は価格下落時に金を購入
価格に敏感な投資家は7月に361キロの金を購入していました。
7月に金価格が下げた際に個人投資家は金購入を進め、金保有量が記録的な水準に上昇していました。ブリオンボールトのリサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュはここで解説しています。
ブリオンボールトの顧客の金購入のペースが、7月に361kgの金を積み増すなど、1月以来の早いものとなりました。
これは、ブリオンボールトのディリーレポートを見ていただくとお分かりになりますが、これは、過去3ヶ月の売却量(192キロ)の倍の規模となります。
これにより、7月末までにブリオンボールトの顧客が保管している金の総量が38.1トンと15億ドル(1710億円)相当となり、主要諸国の金準備高と比較すると49位へと押し上げたことになります。
そして、昨年同時期と比較すると8.1%増で2.9トン増となります。これは、ブリオンボールトで10年前に保管していた金総量(3.1トン)の12倍となります。この時期は世界金融危機が引き起こった2007年8月で、世界の金融市場が凍りついた時でした。
この際、既に金を購入していた事は、賢い動きであったと思ったことでしょう。他の投資の保険の役割として、株式市場と長期金利が下げる中、金はその後上昇したのでした。
弊社の新たな資産分散計算ツール(英語)を見ていただくと、資産の10%を金に振り分けておくと、英国において過去40年間で最も投資損失が大きかった2008年にその損失を半減できたことが分かります。また、米国で2012年までの5年間では、25%の資産を金に振り分けておくと収益を倍増できたことも分かります。
このように金融市場が荒れたのは、2017年に株式市場が史上最高値を記録し、ボラティリティが記録的に低い現在は、遠い昔のことのように思われるかもしれません。しかし、このような危機のために保険として金を購入する人々は、金が下落した際に購入を進め、着実に保有高を増加させながらも、上昇した際に売却するなど、価格により敏感になっています。
このようなストラテジーは、アジアの価格に敏感な消費者の金取引手法と似通っています。より多くの欧米の個人投資家は、価格が下落した際に購入し、価格が上昇した際に利益確定の売却をするものの、引続き保有も続けています。そして、より多くの投資家が費用を削減し、24時間取引でき、売買価格を付ける事ができるなどより良いコントロールを得るためにブリオンボールトを利用しています。
金の購入者数が増加し、金の売却者数が減少した先月、金の月間平均価格が下落する中、金投資家インデックスは上昇しました。
ブリオンボールトで実際に行われた取引を元に算出されているこの数値は、ドル建て金価格が1236ドルと1.9%下げる中、7月に55.1と6月の54.1を上回ることとなりました。
これにより、個人投資家の金地金現物投資のセンチメントを指標化した金投資家インデックスは、7ヶ月連続で金価格と逆の動きをしたことになります。
そして、このような長い期間、金価格と金投資家インデックスが逆の動きを続けたのは、2009年10月にこのデータを算出し始めてから初めてのこととなります。
金投資家インデックスが50である場合は、ブリオンボールトのネット購入者数とネット売却者数が完璧に一致したこととなります。金への関心が薄れた2015年1月には50.5と最も低い数値を記録し、米国大統領選挙が行われた昨年11月には、5年ぶりの高さの59.3まで上昇していました。
2012年2月に算出を始めた銀投資家インデックスも、7月に7ヶ月連続で価格と逆の動きをし、このような動きは記録上では最も長い期間となりました。
そして、個人投資家の銀投資へのセンチメントを表す銀投資家インデックスも、7月に55.5と6月の53.1から上昇していました。
ブリオンボールトの顧客は、ドル建て月間平均銀価格が4.7%下げて16.14ドルとなる中、月間増加量は11月以来最大となっていました。
その量は重量にすると9.4トンで、顧客が保有する銀総量は687トンと3ヶ月連続で増加し、2016年同時期から14%の増加となっていました。
それでは、2017年の「価格下落時に需要が増加」という傾向は続くのでしょうか。短期的には、金と銀の価格は強気とは言えないでしょう。アジアの需要は市場を支えることはあっても、価格を上昇させることはありません。また、アジアの消費者と同様な動きを見せ始めた欧米の投資家の動きは、米国や英国の機関投資家の価格上昇時に買い、下落時に売る動きと衝突することでしょう。
しかし、個人投資家は、2007年に学んだように、自分の資産を増やすとともに保全するという目的があるのです。そのために、金はリスクを軽減するための役割を十分に果たすことでしょう。