金市場のファンダメンタルの変化について
金と銀の市場に落ち着きが戻りつつあります。4月19日の時点で価格はそれぞれトロイオンスあたり、1400ドル、23.50ドルの前後を推移しています。ブリオンボールトのチーフエコノミストのベン・トレイノアは、ここで今週の市場を振り返り、金市場の変化について解説しています。
金の暴落は、投資対象としての金の意見を二つに分けるものとなりました。この対極にある意見は金投資を信じない人々が発するものであり、そのために、金価格暴落を祝い、それを表すチャートを勝ち誇ったように表示して解説しています。それに対し、金投資を信じる人々は、今こそが買い時だと語っています。また、暴落後には急騰もあるはずだと。
私達は、どちらの意見も満足のいくものではありません。私達が常に述べているように、金を所有するには良い時期と悪い時期があります。難しいのは、この時期を予知することです。過去の例を見ることも出来ますが、何らかの参考になったとしても、必ずしも歴史は繰り返すものではありません。
過去には、1975年初めから1976年8月までに、金価格はその価値の半分を失っています。これにもかかわらず、金はインフレと共にその価値を目覚しく回復したのでした。
新聞が今週何度も報道していたように、金価格は30年来の暴落となりました。1970年代半ば下落のようには、1980年代の下げにおいては、その価格は回復することはありませんでした。金融政策が引き締められ、インフレが沈静化すると共に、実質金利の下げ止まり、金がその魅力を失ったのでした。
そのため、このように歴史から学ぶことを望む人々とにとっては、残念なことに、先の二つの時代の背景はどちらも現在と重なることはありません。金利は、かつて見たことの無い低い水準であり、インフレも高まっていません。また、私達は歴史上でも最も大規模な経済バブルとその崩壊を経験したのです。そして、デフレの傾向も強く残っています。そのために、中央銀行はかつてないスケールで金融の量的緩和を行なっているのです。
このような環境化においては、歴史に学ぶことは出来ません。過去に、このようなデフレを経験したのは、当時最も力を持っていた米国が金本位制を導入していた、大恐慌時です。そして、当時金のドル建て価格は20.67ドルから35ドルへ上昇しました。しかし、これは、ルーズベルト大統領の大統領令によって可能となったのです。
多くの金の強気論者は、中央銀行はデフレと戦う政策の舵取りを誤り、経済の健全性を失わせ、その通貨価値を失わせると考えています。私達は、今リスクは高いと考えます。
また、金の弱気論者は、金価格を押し上げていた要因が変化しつつあると考えています。金の上場投資信託は、機関投資家を含む全ての投資家が金投資を行なうことを安易にしました。しかし、年初から15%の資金がここから流出しています。
投資家、特に機関投資家は、金融危機を恐れることに飽きてきています。そのような中、金価格が暴落したことから、再度金のポジションを持つには勇気がいるものです。危機が長引く中、それに関する耐性も高まっています。人々が、金へ向かうにいたるには、かなり大きな危機的状況が訪れる必要があることでしょう。
その間、中央銀行の中でも特に新興国の中央銀行は、近年金の購入を行なっています。しかし、キプロスがその金準備を売却するというニュースは、その傾向を信じる人々を戸惑わせるものです。もし、より大きな金準備を持つ、イタリアやポルトガルといった債務難の国々が、同様な決定をしたとしたら、この状況は大きく変わってきます。
今週の価格の暴落にも関わらず、私達は金の時代は終わったと宣言するのは早いと思います。しかし、金市場のファンダメンタルは、昨年と比べて確かに異なっていることは明らかです。
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Ben Traynor, 05 Apr '13
ブリオンボールトのリサーチ研究員として、金市場分析記事をまとめているGold News(英語)の記事を執筆。現職以前には、英国の投資関連情報を提供しているFleet Street Letterで記者として活躍。ケンブリッジ大学で経済学を専攻。
Ben Traynorは、YouTubeでも閲覧できる、ブリオンボールトのウィークリービデオ(一週間の金市場のまとめ)の執筆及び解説をしている。詳細(英語)はこちらでもご覧いただけます。Google+