過去15年間の貴金属価格の推移と傾向について
貴金属はなぜ1月に価格が上昇するのでしょうか。
過去15年間において貴金属価格は1月に上昇する傾向があります。ここで、ブリオンボールトのリサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュがその背景を解説しています。
2003年からは、1月にドル建てにおいて金・銀価格が11回、日本円建てにおいて金価格が12回、銀・プラチナ価格が11回上昇していました。
ドル建てプラチナ価格においてはさらに安定していて、過去15年間で14回上昇していました。
この傾向は、将来の価格の上昇を保証しているものでは決してありません。
しかし、貴金属価格が今世紀これまで1月に上昇する要因を、アナリストは中国の春節(旧正月)の金の高い需要をあげるかもしれません。実際、中国の春節は、インドのディワーリ(光のフェスティバル)の需要を抜き、世界で最も金を購入する行事となっています。
もしくは、金融市場が1月に良くないことが多いということかもしれません。それは、メディアなどが翌年の価格予想や年末から年初にかけてのセンセーショナルな見出しに影響を受けているのかもしれません。
そして、投資家は年末にその年を振り返った時に、その良い年を思い、新年への懸念を膨らましてしまう傾向があるのかもしれません。
2017年の暮れは、世界の株式市場が史上最高値を付けていました。歴史的にも最も多くの資産を持つとされている一人の資産家が、一つの絵画に5億ドルを支払っていました。人々は1年間に21倍に上昇した仮想通貨にレバレッジをつけて取引をしようとしていました。そのような中、金利は史上最低値へ留まり、貴金属価格は下落していました。
ブリオンボールトの顧客は、このような状況を買い時と見て、昨年12月の取引量は前月比32%増となり、月間で金の売却量を差し引いた購入量は659キロとトランプ大統領が選出された時以来の記録的な量となり、顧客が保有する金総量は38.7トンと記録を更新していました。
それに対して、機関投資家は12月に、コメックス銀先物・オプションで記録的な速さでショートポジションを増加させていたように、12月半ばまでは価格の下げを予想したポジションを膨らましていました。
新年が明け2018年1月は、金・銀・プラチナ価格は、それぞれLBMA価格において前月末比4.1%、2.2%、8.4%上昇で始まり、過去15年間の傾向が継続することは確実となっているようです。
エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。
弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。