金購入がトランプ大統領選出以来の高い水準へ
個人投資家の金へのセンチメントは2018年8月に堅固なものとなっていました。
2018年夏の個人投資家による金購入は、トランプ大統領が選出されて以来の高い水準となっていました。ここでブリオンボールトのリサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュが解説しています。
それに対し、金ETFはその残高を減少させ、金の先物・オプション市場では金のショートポジションが記録的な高さへと増加しています。
しかし、個人投資家はその傾向とは異なり、価格の下げを購入機会として、金保有量を増加させていました。
先月の月間平均金価格はドル建てでトロイオンスあたり1201ドルと、2017年1月以来の低さで、5ヶ月連続で下げていました。そのような中、金投資家インデックスは8月に56.0と21ヶ月ぶりの高い数値となった7月の56.8の水準を保持していました。
金投資家インデックスは、ブリオンボールトの全世界の72,000人以上の個人投資家が売買したデータから算出されており、この数値が50の場合は、その月の金購入量が売却量を上回ったネット購入者数がネット売却者数と完璧に一致したことを意味します。
この数値は金価格が史上最高値を付けた2011年9月に71.7のピークとなり、2014年から2015年の冬に50.5と最低値を記録しています。
今年6月、7月、8月の3ヶ月間の平均値は55.9で、2017年1月で終える3ヶ月間の平均値までと比較しても最も高くなっていました。
金をこのような安い価格で購入することは、今年政治や経済や新興国市場のリスクが、強気市場を長期に続けている株式市場に変化をもたらしたならば、賢明な選択であったことを証明するかもしれません。
今月はリーマンショックから10年目で、金が歴史的に長期に渡る株式市場の低迷による損失の保険となったことを思い起こさせることでしょう。
ブリオンボールトで、先月保有する金を増加させた顧客数は、7月の20ヶ月ぶりの高さから5.4%下げていました。それに対し、10年ぶりの低さを記録した前月から金保有量を減らした顧客数は14.1%増えていました。
しかし、新規顧客の数は7月からは46.3%増の今年2月以来の高さとなり、来年3月末に迫る英国のEU離脱を巡る懸念の高まりからも英国の顧客に牽引されていました。
英国ポンドが為替市場で下げたことで、英国ポンド建て金価格は8月にほぼ横ばいとなり、2016年12月以来の低い水準を推移していたことも要因と考えられます。
銀投資家インデックスは、8月に銀の月間平均価格が4.5%下げてトロイオンスあたり15.01ドルと2016年1月以来の低さとなる中で、53.9と前月の53.7から上昇し、3ヶ月連続の上げとなっていました。
月間で銀購入が売却を上回ったネット購入者数は9.0%増加し、3月以来の高さとなっていましたが、ネット売却者数は14.7%増とそれを上回っていました。
そのような中で8月に銀の売買をした顧客数は銀保有者全体の10%を超え、5ヶ月ぶりに上昇していました。
また金の取引量は、過去12か月の平均から31.7%増加し、ブリオンボールトにおける一日当たりの平均取引量は43キロ、評価額で170万ドル(約1億8700万円)となっていました。
顧客が保管する銀の総量は、8月末の段階で重量において前月から全く変化はなく、727トンとなっていました。
しかし金の総量は、史上最高値を付けた7月の39トンから、大規模な顧客数人が売却をしたことから301キロ減少していました。
ブリオンボールトの顧客は、89%が北米か西ヨーロッパに住んでいます。そして、顧客全体では9月初めに15億ドル(1,660億円)相当の金と、多くの中央銀行の金準備を超える量を保有しています。
それに加え、3億4300万ドル(約380億円相当)の顧客の銀地金を保管し、2017年3月にワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシルと提携して提供を始めた1500万ドル(約17億円相当)の顧客のプラチナを保管しています。
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エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。
弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。