【金投資家インデックス】コロナ危機の記録的な需要で購入された金、銀、プラチナの 総額が約5億ドルに達する
投資家が株か債券か預金家という厳しい選択肢に面する中で、貴金属投資へ4億4200万ドルの資金が流入していました。
個人投資家の金投資需要は過去6ヶ月間にブリオンボールトにおいて5億ドル相当の貴金属を購入する高い水準となっていることが最新のデータで明らかとなりました。
2005年にサービスを開始したロンドンを拠点とするブリオンボールトのオンライン市場での金、銀、プラチナの現物需要は、3月にコロナウイルスがヨーロッパと北米で流行して以来、4億4,200万ドル(468億円)を超えいました。
これは、2011年7月から12月のドル建てべースでの資金流入額を13.1%上回り、この記録的な貴金属の需要と価格の高騰は、ロンドン、ニューヨーク、シンガポール、トロント、そしてチューリッヒの専門保管場所に保管されているブリオンボールトの顧客資産の価値を51.2%増加させ、38億ドル(4027億円)相当としていました。
主要国政府がコロナ危機対応のために大量資金を投入し、中央銀行がインフレを容認するとしたことからも、金地金現物に対する投資家の強い需要は、今後も拡大していくことでしょう。
投資家と貯蓄家は選択肢として、Covid-19による経済不況を否定している株式市場か、保有することで購買力の喪失が保証されている現金か債券という厳しい状況下にいます。そのような中でも、貴金属はインフレとデフォルトリスクから富を保全できる方法として明確な代替案を提示しているようです。
もちろん金・銀・プラチナ投資にも価格リスクはあります。しかし、金融市場の有価証券や通貨そのものとは異なり、貴金属投資はインフレとデフォルトリスクという、現物資産投資以外の投資資金が瀕しているリスクから逃れることができます。
そのために、8月には金価格がトロイオンスあたり2000ドルを超えて史上最高値を更新し続け、銀は1987年以来の最速ペースで、7月から31.8%と急騰している間に 、プラチナ価格は4ヶ月連続で上昇していました。
この状況は購入意欲を抑制するどころか、需要の増加と利益確定の売却減少を引き起こすこととなりました。
金は他の投資資産が下落したときに上昇する傾向があり、人々が中央銀行への信頼を失った時には更に上昇する傾向があります。世界の中央銀行の総裁は彼らの力への自信を無くし、金融緩和をして資金を市場に流し込むことのみをしています。
パウエル米連邦準備制度理事長が先月、中央銀行総裁が一同に集まるジャクソンホールの年次会合で「インフレターゲット」の廃止を発表したことを受け、8月に月間で金の購入量が売却量を上回っていたネットの購入者数は7月から28.0%増加し、ブリオンボールトの創立以来15年間で3番目に高い数値となっていました。
その一方で、金のネット売却者数は7月の13ヶ月間の最も高い値から17.3%減少していました。
これにより、その月のネット購入者数とネット売却者数のバランスを表す金投資家インデックスは7月の57.9から上昇し、8月には62.3に達していました。
この月間の上昇率は7.6%で、過去5年間で3番目に高い急上昇となりました。この数値が50.0であった場合、ネットの購入者数とネットの売却者数が完璧に一致したことを意味します。
金投資家インデックスが先月よりも高い数値を記録したのは、この数値が発表されて以来11年間で5回だけで、それは、2011年の世界金融危機時、そして今年の春にコロナ危機が発生した3月以降がその他の4回となります。
7月の金価格は2011年の最高値を超えたものの、8月に入ってトロイオンスあたり2000ドルを超えたことで、新たな需要が増加したために、投資家の金売却は減少することとなりました。個人投資家の金に対するセンチメントは、3月と4月の急騰がなければ、9年ぶりの記録を更新していました。
金の月平均価格は8月に7月から6.8%上昇し、2016年2月以来の速いペースでの急騰となり、過去10年間で4番目に高い上昇率となっていました。
昨年のこの時期から比較すると、ドル建てでは30.3%の上昇となり、金の月間平均価格は5ヶ月連続で上昇して、2011年半ば以降で最長の上昇期間となっています。
そこで、8月のブリオンボールトにおける金地金の需要は0.6トン増となり、過去12ヶ月間の平均値を23.3%上回っていました。これにより、顧客の金地金の総保有量は44.5トンとなり、2020年初頭から13.5%増加して過去最高を記録していました。これは、世界の中央銀行の金準備と比較しても、トップ45カ国の中央銀行を除く、他の中央銀行の金準備を上回り、また株式市場で取引されている主要15の金地金ETFを除く全てのETFが保有している金地金よりも多くの金地金を保有していることになります。
銀の投資需要は8月にも増加し、工業用途として利用価値の高いこの貴金属の価格が過去33年間で最も速いペースで急上昇したこともあり、多くの利益確定の売却をも再び上回ることとなりました。
銀の月平均価格は31.8%上昇し、1987年4月以来の急激な上昇となった。前回このように銀価格が急騰したのは、金に対する比率が低かった際に、メキシコとペルーの2大銀産出国による協調的な減産の噂が投資需要を突発的に起こした時でした。
今年8月に月間で銀地金を売却量よりも多く購入したネット購入者数は、7月から10.1%増加し、2009年にブリオンボールトが銀地金投資サービスを追加して以来2番目に多い月となる中で、銀地金のネット売却者数は、7月の過去最高記録から8.4%減少していました。
その結果、銀地金投資家インデックスは4.6%上昇し、7月の58.9から61.6へと上昇していました。
銀価格と同様に、投資家の銀へのセンチメントも、3月と4月の価格の急落によるバーゲンハンター的急増がなければ、7年ぶりの高値を記録していたことになります。
銀の重量ベースの需要は21.7トンと過去12ヶ月の平均と比較すると5.1%減であったものの、ブリオンボールトの顧客が保有する銀総量は1,063.1トンを超え、2020年初頭から29.3%増加し、過去最高値を更新することとなりました。
プラチナの純需要もまた先月62キログラムと、7月の需要量を81.9%上回り、顧客の総保有量は1.8トンとなっていました。これにより、ブリオンボールト顧客資産は、38億ドル(4,027億円)相当で6ヶ月前から51.2%増(日本円建てで46.7%)と、過去最高を記録することとなりました。
エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。
弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。