金貨と金地金:ドイツは売り、中国とインドは買い
2024年に史上最高値を更新する価格からも、金投資の傾向はアジアと欧米の家庭の間で異なっていることが、本日発表された新たなデータで明らかとなった。
これは、貴金属専門コンサルタント会社のMetals Focusがまとめた数字であり、鉱業業界のマーケティング団体のWorld Gold Councilが、7月30日火曜日に発表したものだ。
世界最大の金消費国である中国では、地金コインと投資用の小型地金の需要が、2013年の価格暴落時を除けば、第二四半期に前年同期比で6割以上急増し、過去最高を記録していた。
中国に次ぐ金消費国であるインドでも、金貨と小型地金の購入が急増し、そのネットの需要は2023年春からほぼ5割増加している
4四半期の累計で見ると、インドの消費者は、先週インド人民党(BJP)率いる政府が金の輸入関税を引き下げた後、価格の著しい下落を享受しているものの、2014年9月までの12ヶ月間以来、地金コインと小型金地金の形態でこの水準で金を購入していないことを意味している。
中国の4四半期の総需要は、過去10年間のピークまであと5トンと迫っており、金貨と小型の地金の需要は、第2四半期に中国本土の小売金投資が80トンに達し、6月までの12ヶ月間では355トン近くに達している。これは、World Gold CouncilのGold Demand Trendsのデータでは、4月から6月までの中国の金宝飾品の総需要に6トン及ばない水準で、少なくとも2010年以来最も狭い差となっていた。
中国黄金協会が発表した別の数字によると、この春は金貨と小型の金地金の需要が107トンと、宝飾品の需要の86トンを上回り、世界第2の経済大国であり、世界第2の人口を誇る中国が、不動産の低迷、株式の弱気相場、GDP成長の急激な鈍化に直面している中、最新のデータでは過去に見られなかった装飾品から投資への需要へと転換していたことを示している。
アジアの2つの巨大な消費市場とは対照的に、欧米の豊かな経済圏では、全ての金貨と小型金地金の需要が第2四半期に前年同期から減少したことが明らかとなっていた。
オーストラリアは19%減、日本は26%減、北米は48%減、そして西ヨーロッパは65%減となっていた。
2010年から2022年の間、ドイツは金貨と投資用地金の消費国として世界第3位で、2020年と2022年の2年間は、世界最大の金消費国の中国に次ぐ位置となっていた。
しかし、昨年のユーロ建て金価格が史上最高値を記録したことに加え、ユーロ圏の銀行の金利がゼロを超えたことから、ドイツの小売金投資商品への需要は75%減少し、中国、インド、トルコ、米国に次ぐ5位に転落していた。
そして、ドイツは再び急落し、2024年の前半にかけて、金貨と小型の地金のネット需要が5トン未満となり、オーストラリア、スイス、サウジアラビア、韓国、パキスタン、インドネシア、エジプト、タイ、ロシア、イラン、ベトナムを含む経済的に貧しい国々や、米国、トルコ、インド、中国といった金消費国の最大4か国の後に続くこととなり、世界全体で18位まで順位を下げていた。
ニュースサイトGoldReporter.deによると、4月から6月にかけて、ドイツの在住投資家は、金貨や小型金地金の形態で、全体で購入した量よりも2.0トン多い金を売却しており、この売却は7月に入っても続いているとのことだ。
ある小さな地金・コインディーラーは「顧客は高値で利益確定の売却を再び売っている」と述べている。
「金価格の再上昇は、金の以前の上昇時に躊躇しすぎた多くの売り手が利益を得るために利用されている。」と他のドイツのディーラーも述べている。
欧米とアジアの金投資トレンドの違いは、金地金を裏付けとするETF信託ファンドのフローにも現れており、中国が2024年第2四半期に4四半期連続でアジア上場の金ETFへの少額の純増をけん引している。
これとは対照的に、欧州と北米の金ETFは、8四半期連続で投資家の購入額を売却額が上回っている。
エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。
弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。