ゴールドコラム & 特集

Vol.12-金箔づくりの道具 その2

以前、vol.5にて「金箔づくりの道具」についてお話させていただきました。今回は、その第2弾。竹の箸や打ち紙といった道具以外、職人の仕事場で見かけたちょっと気になるアイテムを紹介いたします。

ある時、仕事場で日本酒のワンカップを見かけました。「昼間から酒か!?」と思ったら、それは紙仕込みの時に柿シブを計るのに使うのだそうです。そうか、ワンカップは1合! 箔の世界では、今でも重さは匁(もんめ)、サイズは○寸○分で計ります。

それからよく見かけるのは缶箱。あっ△△屋の煎餅! むむっこれは○○堂のクッキー&チョコ詰め合わせデラックスタイプではないかっ 
しかし、それらの中身が入っていないことは、食べ物に関して異様なまでに勘の鋭いワタクシにはすぐわかります。
中に入っているのは、カットした上澄(まだ厚い状態の金。厚いといっても 約1,000分の1?2mm)だったり、作業途中の金箔を挟んだ紙だったり。金箔と煎餅の共通点とは? それは湿気を嫌うということ。
金箔の大敵は静電気と湿気。箔を扱う際は静電気を帯びない竹製の箸を使うことは、以前にお話しました。もうひとつのやっかいもの、湿気があると金箔はベタッとなり、紙に挟んだものであれば紙にくっついてしまいます。余談ですが、梅雨時は箔づくりにおいては本当にイヤな季節なのです。
缶に入れておけば、煎餅も湿気らずサクッとおいしいまま。金箔もふわりとキレイなまま。仕上がった箔を問屋に納品する際には、さすがにお菓子の缶ではなく、無地の専用缶箱が使われますけれども。
缶箱なんてなかった昔々は、桐でつくった木箱を使っていました。今でも桐箱を使っている職人もいます。桐ってスゴイです。湿気に敏感に反応して調整を行い、中に湿気を通さないという特性をもっているんです。だから大切なお着物は桐のタンスにしまっておくのですね。


左は、箔を挟んだ広物帳が入った専用の缶箱。右は、昔=おかきの箱、今=箔材料入れ。


コンビーフの缶の端。 本当に道具なんだろうか…


れっきとした道具なんです! ほぉら、きれいに削ぎ落とせましたよ


缶つながりでもうひとつ。
上澄の工程においては、中に挟んだ金が紙からはみ出るまで機械打ちをします。機械場から出てきた職人の手には、金がフリルのようにひらひらした打ち紙の束。次におもむろに取り出したるはコンビーフだかスパムハムの缶の端切れ。何ですか、これは!?
職人は新聞紙を広げ、右手にその缶を持ち、紙束からはみ出た金を削ぎ落としだしました。その様子を見て納得! 手に収まりのよい大きさと、動きから見ても合理的な形。先代からずっと使ってきた道具だそうです。

いずれも普通にそこらにあるものばかり。でも仕事場にはハイテク機械もかなわないスゴイものもありますよ。それは温度や湿度など微妙な変化に応じて作業を調節できる職人の感覚!


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プロフィール

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HAKUZA

世界に誇る伝統の技を残し、世界遺産となった中尊寺金色堂など重要文化財の金箔を手がける。2002年、「純金プラチナ箔」(特許取得)を開発。箔本来の力と美しさを「箔品」として表現し、「箔座本店」をはじめとする石川県金沢市の直営店のほか、東京日本橋で旗艦店「箔座日本橋」を展開。

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