ゴールドコラム & 特集

今年の相場の振り返り(シルバー)

「シルバー」



 シルバーはほぼゴールドと同じ動きに終始しました。上のチャートは2012年末からのゴールドとシルバーのチャートですが、ほぼ重なっているのがひと目でわかります。大きな価格の動きの要因はほぼゴールドの価格と言っていいでしょう。極端に言うとシルバーの値動きを考えるのなら、ゴールドがどう動くか考えることが一番大切ということになります。ですから、この一年の振り返りも先週のゴールドの項をみてもらうのが一番よいです。この一年の現在(12月11日)までのシルバーのレンジは1月22日の33.24ドルから6月28日の18.22ドルということになります。ゴールドの高値安値も同じ日につけています。そして12月11日現在は20.40ドルレベルです。

一年のレンジ:Open 30.30 High 33.24 Low 18.22 Last 20.40

(シルバーETFとNymexの投資家ポジション:白線ETF、黄線Nymex、緑線価格)



ゴールドと違いがあるとすればその市場内部要因ですが、今年、Gold ETFは800トン以上もの残高を減少させて投資家のゴールド離れの象徴となりましたが、シルバーではETFの年間を通した大きな減少は見られず、6月末に減少が見られたもののほぼ安定的に増加しています(下チャート)。過去5年をみてもその増加傾向はいまだに変わっておらず、大きく残高を減らしたゴールドとは対照的といえます。少なくともETFへの投資家に関する限り、ゴールドへの投資家とはまったく違う動きをしているといえます。

(Silver ETF過去5年の推移)



ゴールドよりもより激しく変化しているのが、Nymexの投資家ポジションです。現在6363Lotsのネットショートとなっており、ゴールドが今年これだけ下がっていてもこのポジションがネットショートになったことはなかったのに対してシルバーは今年3度もネットショートポジションに陥っています。そして現在それが一番大きくショートになっている情況です。シルバーは米国ではPoor man’s goldと呼ばれており、ゴールドには高すぎて投資できない多くの小口の個人が投資をしており(アメリカ人のシルバー選好は有名)、Nymexにおいてもそういった個人投資家いわゆるMom&Dadのインタレストが多数入っているものと思われます。そのため、ゴールドと同じ動きをするといいながら、動くときはゴールド以上に大きく動く場合が多く、よりhigh risk high returnになっていると言ってもいいでしょう。短期的にはこのショートポジションは買戻しにより相場が反騰する材料となりえます。過去3月と6月のネットショートがもっと小さく短いものであったことを考えると、現在のショートの反動の動きはけっこう大きなものになりえる可能性がありますね。



「シルバー実需の動き」

景気回復の動きとともにシルバーの産業用需要は伸びつつあります。リーマンショックからの景気後退による産業用需要の減少、ゴールド高騰を追いかけて、投資家の買いに夜価格の高騰などがあり、昨年までのシルバーの実需は厳しい情況が世界的に続いていました。しかし今年2013年はそれが大きく転換した年になりそうです。

 2008年のリーマンショック以来の世界的不況により、主たるシルバーの末端での需要の減少がみられ、それに加えて価格の高騰と激しい値動きのために、シルバーの使用を極力絞り込む動きがいろいろな製品の生産者にみられました。工業生産に対する経済の影響は、循環的なものと考えられますが、いちど「省銀化」が行われるとそれが逆に動くことはまずありえず、需要を破壊してしまうことになります。こうやって続いてきたシルバーの需要の不調は、2013年が転換点となりそうです。それには二つの理由を挙げることができます。まず第一に多くの産業分野が景気回復を実感し、それにより動き始めていること。第二に年初よりも遥かに安くなったシルバー価格により、「省銀化」がそれほど緊急な課題ではなくなったことがあげられます。ゴールドほどの現物投資がないので、ゴールドにおける中国やインドの買いといった目だった買いにはなりませんが、需要の7割を占める産業用需要は今年から確実に上向きになっており、株価の上昇が続き景気回復が本格的に進むようであれば、シルバーの産業用需要が今後増加していくでしょう。

「今後のシルバーの価格動向」

ゴールドとの相関関係はそう簡単には崩れないでしょうが、好景気で投資資金が逃げるゴールドと好景気で実需需要が増えるシルバーではおのずから、その動きは違ってくると思います。その意味ではゴールドとのRatio(Gold/Silver)も現在の62前後から下がっていく、つまりシルバーの比較的価値が上がっていくことでしょう。絶対的レベルでは18ドルがが現在のシルバーの大底になり、再び30ドルを目指す動きとなるのではないでしょうか。

(Gold/Silver Ratio)



以上。

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岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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