スタンダードバンク相場予想 「シルバー」2014-06-27(第3四半期)
今回はシルバーです。
「貴金属の相場予想」
「Silver」
2014年の平均価格は20ドル以下の見方を維持
シルバーは、ゴールドと違って工業用需要の割合が40%とはるかに大きいメタルです。そのために価格形成にはシルバーを使った製造業や工業生産が重要な役割を果たすはずです。
しかし、余裕在庫が十分にある現状では、投資需要がもっとも重要で鍵となる価格の決定要因になっています。もし米国の実質金利が上昇すれば、ゴールドの場合と同じようにそれはシルバーにとってマイナス要因になります。シルバーと米国実質金利の間の反比例の関係は大変強いものです。(Figure1)ただ工業用需要の割合が高い分、ゴールドほどは強くありませんが。前回のゴールドの部分で述べられたとおり、市場の大方は今後一年のドル金利の上昇を予想しており、そのためゴールドの価格は頭が重たいと考えています。
ETFの残高は堅調
ETFの残高は大きく変わらず。ただここ数ヶ月間はその増加のペースに陰りが見えてきています。(Figure 2)我々は米国長期金利の上昇と並んで、ETFの残高はシルバーにとっては潜在的なリスク(売りとして現れる可能性がある)として捉えています。
他の貴金属と同様に、中国は重要なプレイヤーであり、シルバーの輸入者でもあります。中国のシルバー輸入に関して二つのポイントがあります。
・第一にまず2010年から2012年の間の例外的に多いシルバーの輸入の結果、国内に相当量のシルバーの在庫が存在すると考えます。我々の最新の計算によると国内での300日分の消費量に匹敵する4000トン以上のシルバーが存在すると思われます。(Figure 3とFigure 4 )
ポジティブな情報としては、中国のシルバー在庫は安定しているということ。そしてETFの残高と比べるとまだほんの少しだということです。(Figure 5)
中国のシルバー輸入の勢いは弱まり、少なくとも今年末までは大きく増えることはない
・第二に輸入のペースは遅くなり、少なくとも年末まではそれが大きく増えることはないと予想。(Figure 6)このペースの鈍化は、投資需要の減少、工業用需要の減少、そして中国国内での在庫が原因です。
シルバーの生産コストは、一般的に現在のシルバー価格(20ドル前後)よりはるかに低いので、シルバーの生産のスピードが弱まることはないでしょう。(Figure 7)また、亜鉛の価格の上昇が将来予想されることから、その副産物としてのシルバーの生産量も2016年以降増える可能性があります。
短期的にはシルバーのリスクは下落リスク、上昇はあっても長続きせず
工業生産は今年と2016年は増加の見通しであり、2010年以来はじめて供給不足になりそうです。ETFの残高が粘り強いものであれば、シルバーが下がりだすのは2015年以降になるかもしれません。
短期的な視点からはシルバーのリスクは下落リスクであり、上昇はあっても長続きしません。需給関係はゆっくりと改善の兆しがみられますが、ETFからの売りの可能性と中国の地上在庫があるため、長期的な戦略を考える上では注意が必要です。短期的には下値は15ドルくらいまではある可能性をみています。15ドルを割り込むレベルでは逆に投資価値が出てくると思います。今後2年くらいかけてアメリカの金利が正常化されたときが、シルバーの売りが一斉に出る引き金になる可能性があります。そのときこそ長期的にシルバーを買う条件が揃うと思います。
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