流出が続くGold ETF
ETFからのゴールドの売りが続いています。今週はETFと今後のゴールドの状況を考えてみましょう。
(Gold ETFの残高推移とドル建てゴールド価格)
先月10月は最大のゴールドETFであるSPDR Gold Shareの残高が28.7トンの減少、ドル総額にしてほぼ10億ドルの減少となり、今年に入って最大の減少幅となりました。これはほぼ6年ぶりの低水準な残高になります。ETF全体のポジションでみると2012年12月に最高残高である2600トンあまりまで伸びましたが、その後は一方的に残高を減らしており、現在は1632トンとほぼ1000トン近く過去約2年に減少しており、現状は2009年8月以来のレベルにまで落ち込んでいます。
Gold ETFが始まったのが2003年でしたが2005年あたりから残高の増加が顕著になり、2008年のリーマンショックを契機に資金の流入がより急激になり、ゴールドの価格の急上昇と歩みを一にして、そのゴールド保有残高もどんどん増加していきました。
そして2011年9月にゴールドがその高値である1900ドルをつけたときから、価格が下落を開始(QEの終了が意識されるようになり)、2014年初頭にはとりあえずの売りが減り、2年にわたる売りもそろそろ終わりを迎えるかと思いましたが、年央からまたふたたび売りが再燃。冒頭に書いたとおり、10月は今年で最大の売りとなりました。実際にETFの売りによってゴールドがマーケットに供給されること、そしてそれにもまして、投資家の心に「ゴールドは弱気」という印象を与えることが、ETFの残高の減少がマーケットに与える最大の影響でしょう。
ゴールドの価格は1200ドルを割り込み、1160ドル台と大きく下げました。これもほぼ2010年以来のレベルです。今現在残っている残高、1630トンからの売りはまだまだ続く可能性があります。それを恐れて投資家たちはSPDRを現金化するおそれがあり、それがまたさらに売りに拍車をかけるという悪循環に陥っています。確かに理論的にはまだ売りの可能性が1600トンもあるということになります。そういった意味ではこのETFの残高は大きな不安要因と言ってもよいでしょう。1200ドルを割った現状のゴールドのレベルでのアジアを中心とした実需の買いがどれほどマーケットを支えることができるのか。この点が唯一このマーケットを支える要因となりえます。残念ながらこれを書いている今現在、大きな実需の買いは見られず、底値の確認があるとしてもまだ少し時間がかかりそうです。
(ドル建てゴールド価格過去5年)
上記のチャートで気になるのは現在のチャートの形が2011-2012年の形に酷似していること。2011-12年時には1500ドルが底値とみられており、そのレベルで3回サポートされ4回目の下値トライで大きく下抜けしました。今回2013-2014年では1170-80ドルが下値レベルで、同様に3回サポートされました。そして現在4回目をトライ中。まだ前回のような非常に大きな下落にはいたっていません。今週末金曜日の雇用統計によってドルがどう動くかによって短期的な流れは決まりそうです。底が割れるのかもしくはここはサポートされるのか。ゴールドは今重要な分水嶺にあります。
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