スタンダードバンク・コモディティ四半期レポート 2015-01-16
今週はパラジウムです。
「パラジウム」
パラジウムはこのところしっかりなマーケットが続いています。基本的な供給不足とロシアをめぐる地政学的に不安定な状況と好調な自動車売上げがこの状況をサポートしています。パラジウムマーケットは投資家のロングが非常に大きな状態が続いており、1月半ばの利食い売りにもかかわらず、まだ総建て玉のうちの63.9%もが投資家のロングです。これまで過去5年間の投資家ロングの割合平均は50.9%です。(プラチナは52.9%です。)
もう一つの要因は原油価格の鋭い下落です。これは特に米国の消費者に対する直接的な「量的緩和」、つまり経済的恩恵であり、自動車の売上が米国と中国では欧州よりもはるかに好調となり、これがプラチナよりもパラジウムの方が価格の下がらない大きな理由となっています。
中国の自動車需要がマーケットを支える
2015年のパラジウムの需要はETFのスローダウンによって減少することを予想します。ETFは2014年には約31トンの需要を生みました。しかしこの減少を相殺するものとして、主に中国による自動車需要の増加があげられます。2015年は世界で9000万台の新車が作られ、中国はそのうち2200万台(約25%)を生産するものと思われます。その結果、世界の自動車触媒によるパラジウムの需要はリサイクルからの供給を含めて、177トンと予測し、これは2014年の158トンを上回るものとなります。パラジウムの需給環境は価格にとっては強材料なのですが、ここからさらに相場を短期的にも押し上げるには他の材料が必要だと考えます。というのは投資家(ETFやNymex)が非常に大きなロングとなっており、他にさらに強材料が出てこない限り2015年に900ドルまで上昇することは考えづらいと思います。
パラジウムのリサイクルが増加の可能性。
パラジウムの二次供給(リサイクル)は現在約80トンであり、供給全体の30%を占めます。この割合は今後も増えていきそうです。現在走っている車も時間がたてばすべてスクラップのリサイクルの過程に入ってくるからです。そしてこれらの車の含むPGM触媒の量は断然に多いものになっています。今現在スクラップとなる過程にあるのは2008年までに生産された車がほとんどですが、2020年になるころには、スクラップとなる車は2010年から2013年の間に作られた車となり、この期間に作られた車は世界経済危機の影響からロジウムをパラジウムに代替する動きがあり、より多くのパラジウムが使われています。もう一つパラジウムの二次供給が増える理由として、排ガス規制は厳しくなる一方で、PGMの使用量も増えていくからです。まだまだ化石燃料で走る車は主流であり続けるでしょう。そしてそれによりもっとも需要の恩恵を受けるのがパラジウムです。小型車ではターボ付のガソリンエンジン車がディーゼルエンジン車よりも好まれます。このクラスではガソリン車の方がディーゼル車よりも安く、またディーゼル車の吐き出すディーゼルの粒子が防げることからもガソリン車の方が好まれているのです。
長期的価格のレビュー
我々の考えるPGMバスケット価格(Pt 6 Pd 3 Rh and etc 1)はR14,000で変わらず。(R=Rand)ドル建てパラジウム価格は900ドルから975ドルへ上方修正しました。それはPGMマーケットが今後その供給不足の度合いをますます深めると予測するからです。アジアの新興国の触媒需要の成長は確実であり、中国は現在世界の自動車生産の25%を占めており、アジア全体での排ガス規制も厳しくなってきているのでこれはパラジウムにとっては非常に強い材料だと言えるでしょう。まとめると引き締まったファンダメンタルズに投資家の投資意欲が重なり、今年はパラジウムはもっとも強いメタルとなると思われます。
★池水氏の著書『「金投資の新しい教科書」/日本経済新聞出版社』好評発売中!!
https://goldnews.jp/count2.php?_BID=3&_CID=16&_EID=773