ICBC Standard Bank Commodities Quarterly 2015 Jul
今週は先週からの続きです。
「プラチナ:自動車触媒」
欧州でささやかれる「汚れたディーゼル」という悪いニュースは、プラチナの主要なこの需要分野に深刻な影響を与えるとは考えません。これはより悪性の排ガスを出す古い自動車をそのターゲットにしており、現在販売中の車や将来的な車の需要には影響を与えないと思います。ただし、現在の否定的な投資家マインドに悪影響を与えていることは否めませんが。
今年の7月までの自動車生産は、米国、中国、インドそして欧州が改善しているために2014年のレベルを超えています。2015年の自動車触媒需要は109トンと予想しており、これは2014年比5%増となります。その根拠としては欧州の需要が8%伸びて、51.3トン。欧州の自動車生産が1760万台で前年比6%の増加が予想されており、そして、その一台あたりのプラチナ使用量が2%増えて2.9gとなるという状況があります。ただし、この予想にもダウンサイドリスクはあり、ギリシャ危機と、もしユーロ圏離脱となった時の欧州消費者の心理的悪影響は注意すべき点だと考えます。
中長期的には欧州におけるディーゼル車のシェアは現在の53%から少しの低下が予想されています。しかし、ガソリン車、ハイブリッド車そして電気自動車への移行は、欧州のCO2排出に対する規制のさらなる引き締めのため、それほど大きくならないと予想します。自動車会社各社は2021年の期限までに、1kmあたり95グラムのCO2排出という目標を達成するためには、ディーゼル車は(ガソリン車と比べると燃料の消費が少ない)欧州の小型乗用車の車種の重要な要素であるべきであると考えています。ディーゼル車の割合は今後も少なくなると思われますが、2020年までに自動車の増加は年率4.1%の割合が予想されているため、実際のディーゼル車台数は、増えると思われます。
重機用のディーゼルエンジンの触媒とフィルターは今後も回復しつつある欧州の需要の伸びの重要な要因となると考えます。需要の増加は2017年以降、中国の自動車への排ガス制御システムが本格的になってくることで加速するでしょう。
「宝飾需要 ― 低調」
中国の宝飾需要は2015年も低調でありそう。2013年の過剰在庫(93トンもの輸入)がその一つの要因。今年の年初から4月までの輸入は11%減少しており、例年旧正月のために、需要が強くなるはずの2月もわずか2.7トンの輸入で、前年比58%も減少しています。2015年下期もプラチナ価格は低迷という我々の見方が正しいとすれば、中国は74トンくらいの輸入はするものと考えます。(4月までの数字は22.8トン)しかし、中国の消費者心理がさらに低迷することがあれば、この予想もダウンサイドのリスクにさらされるでしょう。
日本の2014年のプラチナ輸入は低調でしたが、2015年は少しながら回復し、4月までの輸入量は20%増加しています。ただ日本の市場自体は2011年のピークから構造的な減少が続いています。円建てプラチナは円安のために、それほど安いというイメージではなく、現在4280円程度、過去5年間の平均価格の4%だけ安いレベルです。(訳者注:このレポート発表後、円建てプラチナは一時3800円近辺まで下げました。)
WPIC(World Platinum Investment Council)によるとインドの宝飾需要は2014年に28%伸びて5.4トンとなり、今年はまたさらに23%増加し、6.7トンとなる可能性があるということです。インドのプラチナ市場は、ゴールドと比べると、まだ未成熟で一般的ではありませんが、現在のセールス努力を考えると長期的には大きな潜在的可能性を秘めた市場だといえます。
「供給 ? 賃金交渉への時間も一年もなし」
2016年6月に次の南アでの鉱山労働者賃金交渉があり、これはドル建てプラチナが上昇する一つの触媒になる可能性があると考えます。(2014年に妥結した3年の賃金交渉の妥結は2013年6月まで遡及適用されています。)現在のAMCU(Association of Mineworkers and Construction Union)は2014年のストライキの時よりもより組織化され、穏健化したように見えますが、多くのプラチナ鉱山で圧倒的な多数を占めることによって得た自信があり、ゴールド鉱山労働者のエントリーレベルの賃金を倍にするように呼びかけていることからも、来年の交渉が決して容易なものではないことが予想されます。
南アからの供給は2014年のストライキによる断絶からの回復を続けており、今年は132.7トンの生産が見込まれ、昨年から22.4トン増えることを予測します。ランド安(ランド建てプラチナ価格のサポート)とストライキ前のレベルへ生産を増やすことによって、単位あたりの生産コストを引き下げることが至上命題となり、需要が弱い中、生産が回復していくという結果になっています。
「市場予想 ? lower for longer ? 価格低迷は長期にわたる」
2015年プラチナ平均価格予想は1134ドル。2016年は1250ドル。直近(これから9ヶ月)はプラチナは弱気。中期から長期は上記にあげたようなファンダメンタルズのためにより、ポジティブであると考えます。