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パラジウム?潮流に逆らって泳ぐには疲れすぎ?


中国の自動車生産の勢いがなくなってきた上に、ゴールド、プラチナ、そして非鉄金属も下げ圧力が強い中、パラジウムも相場が引き下げられました。直近のファンダメンタルを考えるとパラジウムはしばらく弱い相場が続きそうだと予想し、2015年下半期は720ドルの平均価格と予想、一年の平均価格は746ドルになります。

今年後半のリスクはやはり下落リスクになると思われます。その不安要因は、何年にもわたって積み上げられてきた投資家のロングポジションと、ロシア政府の在庫がマーケットの頭を抑えていることにあります。




プラチナと同じく、ここ最近はファンドもパラジウムをショートしたがっており、Nymex投資家ポジション(non-commercial )は6月後半で46.7トンのショートとなっており、一ヶ月で15.5トンから大きくショートが増加しています。

2016年も予想されるリサイクルからの供給の増加と需要の成長の鈍化により、パラジウムの相場は厳しそうです。年間平均価格予想は775ドル。


「ロシア:ノリリスクと中央銀行のパラジウム取引は20億ドル?」

ノリリスクが中央銀行の持っているパラジウム在庫の買取を提案しており、おそらくこの取引は行われるでしょうが、まだ確実には発表されていません。この取引のサイズやストラクチャーもまだはっきりしていませんが、ノリリスクのコメントからは、$500millionから$2billionの間で投資家の意欲次第だという印象です。パラジウムの量に換算すると少なくて約21トン、多い場合は87トンということになります。マーケットはパラジウムの地上在庫についてもっとはっきりした数字を知りたがっていますが、ここまではまだロシアのこの取引に関しては役に立つような情報は出てきていません。

「減速する中国の自動車市場がマーケットに心理的影響を与える」

2014年の中国の自動車生産は2210万台でした。今年は2430万台に伸びることを予想。年初から5月までの数字が850万台であり、昨年の同時期よりも50万台多い数字になっています。しかし、2400万台の予測は現在は難しくなりつつあります。自動車生産が予定よりも減少傾向にあり、売上げの伸びも減速しているからです。北米のマーケットは5月末までで、生産は回復傾向にあり昨年比4.5%アップ、1750万台という2015年予想を達成できそうです。

2015年のパラジウムの自動車触媒需要は239トンへ前年比6%の増加を予想。北米、中国、そして欧州がそれぞれ、62.2トン、56トン、52.9トン。

長期的予測では2020年には世界の自動車生産は1億1100万台に達すると予測し、中国がそのうちの27%、米国が14%を占めると考えます。中国がやはり最大の自動車市場ということであるのと、排ガス規制をより厳しくするということで、単位当たりのパラジウム使用量が増えるということで、やはり中国が今後も鍵を握るといえるでしょう。



「ロジウム ? 地上在庫が相場を圧迫」

ロジウムは現在でもまだパラジウムもしくはプラチナへの代替が経済的には合理的ですが、在庫の確保を重んじる自動車会社は、鉱山会社との長期契約を継続し、より集中的にロジウムを使う方向に動いています。

短期的な需給は弱く、在庫は豊富にあります。2015年、南アの生産が正常に戻ったことにより、マーケットは供給過剰になり、我々の計算では650kgあまりの過剰になると見ています。

2015年の平均予想は1071ドル、2016年は1400ドルと予想します。

「排出ガス規制法案が重要」

「Euro 6 排出ガス規制」の第一段階は2014年9月に始まりました。この規制は大型車の窒素酸化物の排出を現在の半分にあたる80mg/kmまでに限ります。窒素酸化物排出のコントロールにおいて、ロジウムは非常に重要な役割を果たすので、触媒のもっとも重要な部分を占めます。そのため規制が厳しくなればなるほど、ロジウムの使用量は増えていくことになります。世界の自動車製造において、ロジウムの需要の80%が必要になると予想されています。



岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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