ゴールドコラム & 特集

ICBC Standard Bank Precious Metals Viewpoint

Standard BankがICBC Standard Bankになってアナリストも新しくThomas Kendallになり、彼の初めてのレポートが出たので紹介しましょう。

「マーケットの大局的現状:中国のクレジット危機と米国金利政策への恐怖」

「マクロ経済と在庫の不安」

・中国の経済立て直しは欧州の成長が滞っている今、より厳しい困難な状況にある。

・中国の金融および財政の緩和は、一時的に苦痛を緩和するかもしれないが、企業の信用供与はより厳しくなっている。

・ここまでの9月の米国の経済指標は、2015年内の金利上げを支持するものではないが、まだ12月の金利上げの可能性がなくなったわけではない。

・将来の米金利の動きは緩慢なものになり、ボラティリティの上昇の方が早くなるだろう。

・過去2年間の在庫レベルを把握してそれを追跡するのはとても困難である。(ニッケル、プラチナ、亜鉛など)

・そのため投資家はコモディティに対する投資をまだ減らしつつある。

「供給サイクルはゆっくりと方向転換」

・鉱山会社は資本的支出(Capex)を切り詰めるプロセスを経て、現在はその多くがキャッシュコストの削減プロセスにある。

・2016年にはその与信の問題からの閉山が増加する可能性がある。

・しかし貸し手である銀行は、ディストレスト資産(不良資産のようなもの)の保有を望まず、可能な限り貸し出しを継続し、より大きなヘッジを求めるであろう。

・コモディティ生産国通貨安が、よりヘッジを促進して、小規模な生産を助けている。

・そのため供給のリストラによるコモディティの供給減少はゆっくりと時間をかけて起きると考える。



コモディティはまだその低迷から抜け出せていない。



コモディティと株式市場のボラティリティ(変動率)は底を打った。

「貴金属の相場予想」

・FRBの金利上げはまだ相場に織り込まれていない。



・FRBが金利を上げるとゴールドはもう一度下値をトライする。

・プラチナとパラジウムはおそらくもう底値をつけた。ただ相場の回復はゆっくりと。

・プラチナはゴールドの価格と並ぶであろうが、それは2016年Q4以降になろう。

・プラチナ:パラジウム比価は、1.40:1辺りでの推移となろう。

「相場予想に関する主なリスク」

ゴールド

上値リスク

・FOMCの利上げは12月にあると考える。もし経済指標が思わしくなく、金利据え置きとなると、ゴールドは我々の予想を上回ることとなろう。

・中国人民元のボラティリティやさらなる元安になると守りの投資としてゴールドに資金が流入する可能性がある。

下値リスク

・米国の金利政策:2016年は0.25%ずつ2回だけの利上げを予想。それがもっと早いペースになればゴールドにとっては弱気材料。

・中国の金利のさらなる下落によるリース市場の縮小。

・中国からの資金逃避のさらなる加速。

・2016年米国の大統領選挙での共和党の勝利。

シルバー

上値リスク

・ゴールドとほぼ同じ。

下値リスク

・インドの輸入の停滞。

・生産者のヘッジ売りの増加。

・米国の金融引き締めが予想よりも早かった場合のETFロングからの手仕舞い売り。

プラチナ

上値リスク

・やはり主に供給サイド:予想より早く、多くの南アの生産縮小は価格上昇につながる。

下値リスク

・我々の価格予想は、欧州でのディーゼル車の売上は2015年の49.5%から2019年に45%と、ゆっくりと進むものと仮定しており、これがもっと早く進めば、それに応じてプラチナの需要は影響を受ける。

・中国の宝飾需要は今後三年間、ほんの少しの減少にとどまると予想しているが、それが楽観的過ぎる可能性がある。

パラジウム

上値リスク

・ディーゼル車の欧州での売上が我々の予想よりも早く進めば、その分ガソリン車の売上が増える。

・中国の直近の売上税の引き下げと安価なファイナンシングが、アナリストの予想以上に中国での自動車販売を引き上げる可能性。

下値リスク

・中国の自動車市場が予想よりもさらに減速した場合。我々の予想は2016年の自動車生産は4.1%の伸び。


岡藤商事株式会社

プロフィール

池水 雄一

Yuichi Ikemizu

スタンダードバンク東京支店長

1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産貴金属リーダー、2009年より世界一の金取引量を誇るスタンダードバンクの東京支店長に就任し、現在に至る。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界の貴金属ディーラーでBruce(池水氏のディーラー名)を知らない人はいないと言われている。著書に「THE GOLD ゴールドのすべて」など。

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