ゴールドとマイナス金利
このたびWGC(World Gold counsil)がマイナス金利の世界におけるゴールドに関するレポートを発表しました。(Market Update : Gold in a world of negative interest rates)興味深いので要点を紹介しましょう。結論を言うと、WGCは、マイナス金利はゴールドにとっては非常に大きな追い風になるということを言っています。
● 2008-2009年の経済危機から世界の中央銀行は揃って金融緩和に動き、2014年半ば以降、現在までの間欧州や日本ではマイナス金利政策をとっています。これはほぼ市場&史上初の出来事であり、その長期的な影響はどのようなものになるのか、まったくもって未知の世界です。ちなみにゼロ金利政策を近年で最初に採用したのは2000年前半のバブル崩壊後の日本銀行でした。
チャート1: 先進国経済各国の国債の金利は低く(その多くがマイナス金利)であり、金利曲線もほぼフラットで、投資家は他に投資対象を探さざるを得ない。
チャート2: 多くの国の負債(国債)が今やマイナス金利になっている。3月21日現在でオーストラリア、カナダ、デンマーク、ユーロ圏(投資適格なもの)、日本、スウェーデン、スイス、英国そして米国。名目金利(Nominal)に対して実質金利(Real)は最新の消費者インフレ率を名目金利から引いて計算しています。
● ここまでの経済の動きは、期待はずれの副作用ばかりが見られています。資産価値の不安定な上昇、膨らむバランスシート、そして通貨安戦争と考えるだけでもいくらでも目に付きます。マーケットの行く末に対する不安が膨らむ中で、ゴールド価格は年初から16%も上昇し、その原因の一部はまさにこのマイナス金利にあると考えられます。
● 歴史を振り返ると、低金利時代のゴールドの長期上昇率はそうでない時の2倍以上になっています。長期的には、マイナス金利は中央銀行にとっても投資家にとっても構造的にゴールドの需要を増加させるものと考えます。
テーブル1: マイナス金利時のゴールドの上昇率はその長期的平均の2倍。(実質金利のレベルによる違い)
● 投資家はそのゴールドの保有を保守的に見た場合でも現在の2.5倍に増やすことによって利益を得る可能性が高い。
チャート3: 外貨準備運用担当者にとって現在の低金利状態は、ゴールドに対する資産割り当てを増やす要因になる。チャートは様々な金利状況の時点でのゴールドへの資産割り当ての最適割合を示すもの。
チャート4: 債券の金利低下によって、ゴールドをポートフォリオとして理想的に組み込む割合が飛躍的に高くなります。
■ マイナス金利が続くとゴールドのポートフォリオとしての需要が増えると予想します。その理由は以下の通り。
● ゴールドを保有するコストが下がること。
● 投資家やファンドマネジャーが投資する選択肢が少なくなること。
● 通貨に対する信用の減少。
● 市場に対する不安と変動率がさらに増大する。