インドのゴールドに対する消費税緩和とゴールドボンドスキームの現状
先週水曜日、インド政府はゴールドジュエリーに対する1%の消費税の適用を緩めると発表しました。新しいルールではこれまで12million Rupee($1.8m= 1.9億円)以下の売り上げの宝飾業者はこの消費税を免除されていましたが、その上限が15million Rupee($2.2m = 2.1億円)に引き上げられ、その上に100million Rupee($14.9m =15.8億円)以下の売り上げの場合最初の2年間は税務調査を行わないとし、宝飾業者からの抗議運動により財務大臣が設置した対策委員会の提言をほぼ受け入れた形となりました。
インド政府が今年の会計年度の予算の中でゴールド宝飾品に対して1%の消費税を賦課することを決定、それに抗議してインド中の宝飾業者が3月1日からストライキに入りました。43日が経過したところで、政府が産業界の話を聞き、その後に必要な措置を取ると確約したことから10日間ストライキは中断されましたが、政府からはなんら具体的な行動がなかったため、宝飾業者は再び4月25日月曜日から3日間のストライキに入ることを決めました。その後、インド中のいろいろな地方の宝飾業界の組合から集まった20人のメンバーが政府と会合を開きました。財務大臣は政府の決定を擁護しました。ゴールドのような「ぜいたく品」が消費税のような物品税を免れることがおかしいということです。しかし、元経済アドバイザーチーフの指揮の下、この問題についての委員会が設立され、検討されました。
政府はまた4回目の国家によるゴールドボンドスキームを7月18日?22日の間に募集すると発表しました。債券の公布日は8月5日で、最低投資単位は現在の2グラムから1グラムへと小口化され、一年での最大量は500gグラム。これが2017年会計年度の最初の回となります。最近の予算案で発表された税金の優遇制度は、この新しい回から適用され、このゴールド債はキャピタルゲイン課税を免除されます。また、年に2.75%の「金利」を受け取ることもできます。この債券の一番最初の発行は2015年11月であり、その時の引き受け量はゴールド915.95キログラムでした。2回目の発行は今年の1月であり、その時のゴールド量は3071キログラムでした。3回目の発行は今年の3月でしたが、引き受け量は1128キログラムでした。ここまでこのボンドスキームが始まった2015年11月から政府が民間や寺院から借り受けたゴールドは3.1トンとなりました。この制度が始まった当初はその有用性に大きな疑問がありましたが、ここまでの進展を見ていれるとまずまずという感じです。インドは国民や寺社などの民間にゴールドが2万トン以上滞留しているという計算になります。
このソブリンゴールドボンドスキームは、ゴールドが原油と並びインドの輸入商品第二位であり、貿易収支の圧迫要因なので、その輸入を極力減少させるための方策です。(インドは年間1000トン近くものゴールドを輸入します。ゴールドボンドによって実際のゴールドの現物を輸入する必要が大きく減ることを期待しているのですが、その狙い通りインドの経常収支は大きく改善しました。
このスキームによって発行される債券は2,5,10グラムから始まるサイズのもので、価格の動きに大きく影響を受けないように、その期間は少なくとも5年から7年という長期になっています。また金利レートは投資時のゴールドの価値をベースに計算されるとのこと。
インドのゴールド輸入量は2016年に入ってから5ヶ月連続で減少しています。2月には約30%の減少、3月には80%、4月には60%、5月は39%と前年比にして大きな落ち込みになっています。金額では今年の最高は3月の49億ドルですが、6月には12.6億ドルと急減。ルピー建てのゴールドの価格の高止まり、そしてこのインド政府のゴールドを巡る上記のような政策が功を奏していると見られています。
インド政府のゴールド輸入を減少させるための政策はゴールドマーケットにとっては明らかにマイナスのものですが、インドにとっては民間・寺社などが保有する2万トン分もの「たんす預金」であったゴールドをまさに「マネタイズ」できる可能性があり、これは国家財政にとっては最大の「埋蔵金」と言えます。今後、インド政府のゴールドを巡る政策はゴールドマーケットそのものの根源にも関わる注目すべき事由であると思います。